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 2024/05/09 14:55

パリ五輪への挑戦、アジアを制した大岩ジャパン: 分岐点と「18人枠」の選考はどうなる?


U-23アジアカップの頂点に君臨した日本代表。限られた準備時間と選手選考の難題にも、大岩監督(中央)の戦略が光を放った

U-23アジアカップの頂点に君臨した日本代表。限られた準備時間と選手選考の難題にも、大岩監督(中央)の戦略が光を放った


 U-23アジアカップを通して、パリ五輪のアジア最終予選を兼ね、4回目の開催で2度目の優勝を勝ち取った大岩ジャパンは、どのようにして厳しい試練を乗り越え、アジアの頂を極めるに至ったのか。大会を通じて日本代表に密接に同行した記者が、この大会の全貌を振り返りつつ、7月に控えるパリ五輪本番でのオーバーエイジを含む「18人枠」の選択肢についての見通しを示す。



激励の歌「86の23分」が持つ意義


 パリ五輪への切符を賭けた瞬間、4月29日のU-23アジアカップ準決勝でのイラク戦。試合を彩ったのは、ゴール裏で日本のサポーターたちが合唱する「アレ!アレ!アレ!ジャポン!」という励ましの声。これは1998年フランス・ワールドカップでの日本代表に向けた応援歌であり、2001年以降に生まれたこの世代にとってはあまり馴染みのない曲かもしれない。


 しかし、そのメロディーを背景に、若きサムライたちはイラクに2-0の勝利を収め、8大会連続の五輪出場権を勝ち取った。さらに彼らは、続く決勝のウズベキスタン戦でも勝利し、アジア最強の名誉と共にフランスへと旅立つこととなる。


 この旅は、約2年前の2022年3月7日に始まった。「A代表経由パリ五輪行き」を目標に掲げつつ、初めてのキャンプを終えた時点で大岩剛監督は、選手たちの成長を促しつつ、次のように語っている。


「国際試合の週だけで集合できる中で、どうチームの足並みを揃え、一つの方向を向くか。それは私やテクニカルスタッフの重要な責務だと思う。この基盤をしっかり築き上げていきたい」


 A代表での活躍が期待される選手たちと共に、監督は2年後のアジア最終予選及び五輪本番にむけて、この世代が抱える特有の問題への対処も意識していた。


 近年、若くして日本を離れ欧州で戦う選手は増加の一途を辿っている。重要な時期に所望の選手を招集できないリスクや、時間と労力をかけて築いたチームが実現しない可能性も数多く存在する。チーム構築の初期段階では、欧州でプレイするGK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)やDF内野貴史(デュッセルドルフ)など限られた選手のみだったが、大岩監督は将来的に欧州組の選手が増加することを予測し、以前の五輪世代よりも積極的に「チームビルディング」に着手していた。


 このプロジェクトを複雑化させるのは、コロナ禍による影響で東京五輪が1年延期され、結果としてこのパリ五輪世代の準備期間が標準的なサイクルよりも約1年短縮された点だ。それにも面食らわず、大岩監督は2年間で総勢86名もの選手を召集するという決断を下した。欧州での中心選手、国内での挑戦者、さらに大学生に至るまで多岐にわたる顔ぶれを呼び、東京五輪で招集された78名を上回る数字である。


「旬な選手を把握する」という理念のもと、新進気鋭の選手を即座に入れ替え、チームが変わっても一貫した戦い方ができるよう、全員が同じ戦術方針の下で戦い続けた。守備では4-4-2フォーメーションを基本に、攻撃的には4-2-3-1あるいは4-3-3へと変化し、柔軟かつスピーディーなボール回しと個々の創造性を加味した戦術で相手を崩していく。セットプレーでは攻守共に多数のオプションを用意し、集中的な練習を重ねた。


 この一連の取り組みにより、大岩ジャパンはピッチ上の選手が変わってもその強さが衰えない、均質なチームを形成することができた。U-23アジアカップでは、エースと目されたMF鈴木唯人(ブレンビー)、A代表へ確実に定着していたGK鈴木彩艶(シント=トロイデン)、両サイドで重要な役割を担うMF斉藤光毅とMF三戸舜介(共にスパルタ)らがクラブとの契約上参加できず、最終リストから外れたものの、挑む23人は確固たる自信をもって臨んだ。MF山本理仁(シント=トロイデン)は述べる。


「数々の遠征で様々な組み合わせを試しました。大岩監督もこうした状況に備えて戦略を練っていたので、不安を感じることはありませんでした」


 これまでの活動で核となっていた選手たちが不在であることが、チームの結束をさらに深める一因となった。大岩ジャパンは、4月8日からU-23アジアカップに向けての活動を開始し、全員が揃った最初のミーティングでは、「我々はU-23日本代表としてここにいる」と監督が言葉を発し、準備していたモチベーションビデオを再生。そのビデオの冒頭には、「86分の23」という数字が映し出されていた。


 大岩ジャパンに参加した86人の選手が一つのチームである──。その決意が固まったのは、このミーティングの瞬間である。山本はコメントを寄せている。


「86人の選手が参加してきたという事実を、今回のミーティングで初めて知りました。ここに参加できて、そして参加できなかった仲間への思いも一緒に抱えながら、日本代表として戦いたいと強く感じました」



選手たちが推し進めた決意の集い


カタール戦を控えた瀬戸際でキャプテン藤田譲瑠チマ(中央)らが取りまとめた、谷口彰悟からの助言を元にした初の選手同士のミーティング。この時生まれた絆がチーム結束の鍵となった

カタール戦を控えた瀬戸際でキャプテン藤田譲瑠チマ(中央)らが取りまとめた、谷口彰悟からの助言を元にした初の選手同士のミーティング。この時生まれた絆がチーム結束の鍵となった


 アジアサッカーの水準は年々上昇しており、その頂点を極めることは容易ではない。今大会においても、心臓が止まるほどの厳しい戦いが続いた。


 開幕戦となった中国戦では、序盤に西尾隆矢(C大阪)が退場となり、その後約85分間を1人少ない状態で戦う試練に直面した。それでも2連勝し、グループステージを突破。しかし、1位を争った韓国との最終戦での敗北は、準々決勝でホスト国カタールとの対戦を想起させることとなる。


 振り返ってみれば、韓国戦に敗れてカタール戦を迎えるまでの短い期間と、その試繰りを耐え凌いで見せた粘り強さが、五輪行きのきっかけとなったように感じられる。


 負ければ五輪の夢が霧散。この厳しい環境の中、プレッシャーの重さに耐えかねるチームの雰囲気が漂っていた。チームのムードを作る小久保玲央ブライアンも、緊張感を内に秘めつつこう振り返る。


「誰も声にはしなかったが、そのプレッシャーは間違いなく全員が感じていた。私も眠りが浅く、心配していた……」


 その不安に満ちた空気を変えたのは、韓国戦翌日に行われた選手同士の会合だ。副キャプテンの一人である内野貴史は振り返る。


「(チームが結成されてから初めて)、選手たちだけで集まって話し合う機会を持ったんだ。それぞれが抱える思いを共有し合い、カタール戦に臨む心境を真剣に話し合った。その集いは、本当に必要なものだったと心から思う」


 計画された選手ミーティングは、キャプテンのMF藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)、そして副キャプテンの内野、西尾、山本、松木玖生(FC東京)が腹を決めた上で、韓国戦後の開催となった。実はこのミーティングのアイディアは、カタールでプレーする谷口彰悟(アル・ラーヤン)が示したものだ。選手たちに激励をしに宿舎を訪れた谷口は、その際、藤田と個別に話し、貴重な助言を伝えたという。


「厳しい局面でどう立ち向かうか、皆がどんな信念で戦うのかを統一することが不可欠だ」


 アル・ラーヤンの練習場にてその時の意向を谷口が語ってくれた時、大先輩の言葉にはつねに影響力がある。この選手間の集まりが「チームとしての結束心とは何か」と自問自答する契機となったのは確かな事実である。



準決勝における圧巻のパフォーマンス


圧倒的な強さを見せたイラク戦の準決勝、出色のパフォーマンスで今大会随一の活躍を達成

圧倒的な強さを見せたイラク戦の準決勝、出色のパフォーマンスで今大会随一の活躍を達成


 それでもカタールとの試合は、想定どおり容易ではなかった。開始後わずか65秒で得た幸運な先制点については、直後に平等化される。前半終了間近に対戦相手のゴールキーパーが一人減り数的有利を生かしたところで、逆に後半早々にリードを許してしまった。こうして攻め手が途切れた時、「大丈夫」と口にしつつ、実際は全員が焦燥感に包まれていた。試合後の選手たちの生の声が、その緊迫した心境を物語っていた。


「我々は長年にわたり築かれてきた成果(7大会連続の五輪出場)に圧倒された感じがあり、(逆転されてから)ゴールも中々奪い返せずに焦った」(MF荒木遼太郎/FC東京)


「28年続いた記録が、ここで絶えてしまうかもしれないと考えると恐ろしかった。韓国が後の試合で敗れたことは知っていたけど、もし僕たちが負けていたら、という考えに震え上がる。二度と経験したくないような試合で、本当に気持ちが悪くなりそうだった」(山本)


 しかしながら、そうした逆境をものともせず、67分に自慢のセットプレーからの同点ゴールを決め、延長戦ではさらに2得点を追加し、手強い相手を打ち倒すことに成功した。


 その勝利が、チームの団結力を更に強化したのは明らかだった。カタール戦を制したことで、次に臨んだイラクとの準決勝では、プレイヤーたちは精神的なゆとりを持ちながらパリ五輪出場権を手中に収める目的で、堂々たる姿でその試合に挑んで見せた。そして結果は見事な2-0の勝利。


 そして迎えた決勝戦では、選手たちは前の目標を忘れず、アジアの王者となるために粘り強く戦いを続けた。


「実際は完璧とはいえないけど、決勝戦はいつだって難しいものだ」


 試合後、大岩監督が語ったように、高い位置からプレッシャーをかけてきたウズベキスタンとの試合で、日本は大部分の時間でコントロールを失いかけた。それでも堪え忍んだ結果、アディショナルタイム90+1分にサブプレイヤーのMF山田楓喜(東京V)が勝利を決定づける執念のゴールを獲得。その4分後には右SBの関根大輝(柏)のハンドが原因でPKを与えるハプニングがあったが、その瞬間、GK小久保玲央ブライアンがゴールを死守する見事なセーブを見せた。


 「自信がなかった」と述べながらも、その圧巻のセーブがチームにリーグ優勝をもたらした。そして、17分間に及ぶ延長時間を耐え抜き、86人の選手達が抱いた思いを胸に、遂に日本はアジアの頂点に立ったのである。



チーム内競争の激化が予測される今後


日本を代表する実力を持つ久保建英(中央)とオーバーエイジ枠候補の板倉滉(左)も、悔しい思いをした東京五輪のリベンジを目指すか。選出される18人の選手たちに注目が集まる

日本を代表する実力を持つ久保建英(中央)とオーバーエイジ枠候補の板倉滉(左)も、悔しい思いをした東京五輪のリベンジを目指すか。選出される18人の選手たちに注目が集まる


 これまでの旅路で、心が折れそうになった瞬間は数えきれないほどあり、スタッフもまた、パリへの道のりが困難であることに疑念を抱いたことが何度もあった。選手たち自身も、昨年のこの時期には、多くが所属クラブでの地位を確立できていなかった。しかし、彼らはこの困難を乗り越え、どんな状況下でも闘える強固な集団へと成長した。


 しかし、この成長が終着点ではない。パリ五輪までの残された期間は約2ヶ月半に過ぎず、次の活動は6月3日から16日にかけての海外遠征(場所は未決)だけだ。日本はグループDでパラグアイ、マリ、イスラエルと同じグループに所属し、最初のパラグアイ戦は地元時間で7月24日に迫っており(マリ戦は7月27日、イスラエル戦は7月30日に行われる)。


 加えて、五輪では今大会の23名から18名にメンバーが削減される。そのため、チーム内での競争はさらに激化することだろう。デンマークリーグで活躍する鈴木唯人を筆頭に、今回招集できなかった選手たちも競争に参加してくるはずだし、大岩ジャパンにも、未招集ながらパリ五輪世代で抜群の才能を持つ久保建英(ソシエダ)を含めたいという意向がある。


 また、日本サッカー協会はU-23アジアカップが始まる前から、オーバーエイジ(OA)枠の選手選考を秘密裏に進めており、クラブとの交渉が順調に進むならば、最大3名のOA枠を活用する見込みである。


 特にセンターバックの位置では、OA枠を2つ使用する可能性が浮上している。今大会で高井幸大(川崎F)が目覚ましい活躍を見せたものの、センターバック陣の厚みを増す必要がある。そこで、A代表経験豊富な東京五輪組の板倉滉(ボルシアMG)が最適な選手と考えられ、左利きのセンターバックとして町田浩樹(サンジロワーズ)も高い希少価値を持つ。


 これら2人は、オリンピック用の「18人枠」に適した選択と言えるだろう。前者はボランチ、後者は左サイドバックとしてもプレイ可能な多機能性を持つ。


 また、U-23アジアカップを激励のため訪れた谷口彰悟も候補の一人として挙げられる。彼のリーダーシップは大きな支えとなり、実際、この大会の2試合を現地で観戦しており、チームに溶け込むのもスムーズだろう。


 残る1枠は、中盤の中心で使うことが望まれる。現在、A代表経験を持つのは藤田譲瑠チマただ一人であり、彼と共に中盤を支える高い経験値を持つ選手の需要が高い。アンカーとしても活躍可能な田中碧(デュッセルドルフ)や守田英正(ベンフィカ)といったA代表レギュラーを招集できれば最良だ。


 しかし、チーム事情などでこれらの選手の招集が叶わない場合、センターフォワードなど他のポジションへの枠利用も検討される。最後の1枠の扱い方によっては、チーム構成が大きく変わる可能性があるため、選考には細心の注意が求められる。


 いずれにしても、五輪本戦を控えた今後は、今大会とは異なる顔ぶれが予想される。6月の遠征ではOA選手も含めた動きが見られるが、これまでとは別の戦術で臨む必要があるかもしれない。しかし、大岩監督以下スタッフ陣には、どんなメンバー変更があってもブレないチーム作りへの自信がある。それは、出場権を獲得した選手たちにも共通する。


「監督が誰を選んでも悩むような素晴らしい選手が集まれば、オリンピック代表チームはさらに強くなるはずだ」


 今大会でMVPに輝いたキャプテンの藤田譲瑠チマが、そう力強く話している。これからは個々がさらなる成長を目指して、新たな挑戦に備えていくしかない。