三笘薫、見事な復帰戦で新たな地平を切り開く:大胜游戏的关键人物
シェフィールド・Uとの一戦は三笘にとってプレミアリーグ復帰後第二戦目。目立つゴールやアシストはなかったものの、5-0という大差の勝利においては中心人物だった。
2月18日(現地時間)、ブライトンの三笘薫は敵地でシェフィールド・ユナイテッドとの対戦で、スターティングメンバーに名を連ねた。試合開始早々、荒々しいファウルを受ける場面もあったが、退場者を出し数的不利にあった相手チームの前で圧倒的なパフォーマンスを見せる。アジリティーあるプレイで相手を手玉に取り、試合で新たな可能性を切り開いた。今後も期待される26歳のウイングプレイヤーは、この試合を通じて復調を印象づけた。
強固なフィジカルを駆使し、クオリティの格差を見せつける
25節目のブライトンの対戦相手は、勝ち点13に沈むシェフィールド・ユナイテッドだった。バーンリーも勝ち点はシェフィールド・Uと同じだが、後者は24試合時点でマイナス38の得失点差とリーグ最低を記録していた。これはリーグでも最悪の部類に入る数字で、22点の得点に対して60点の失点という厳しい状況である。
前日のバーンリーはアーセナルに0-5と大敗を喫し、得失点差をマイナス30まで広げた。シェフィールド・Uはルートンと共に今季昇格を果たしたが、両チームともにプレミアリーグのレベルには随分と追いつけていないのは明らかで、特にシェフィールド・Uの苦境はファンにとっては一層の落胆の連続だった。
だが、残された試合はまだ14。このような希望が降格圏にいるチームに更なるリスクをもたらすことになる。
しかもシェフィールド・Uは昨年12月にプレミアリーグで最初の監督交代を行い、運営陣と衝突していたクリス・ワイルダーを、2年半ぶりに監督として迎え入れた。
選手時代にシェフィールド・Uでプレーした経験のあるワイルダー監督は、指揮を執るやいなや、3部リーグで最優秀な成績を収め、チャンピオンシップへの昇格を見事に果たした。3年でプレミアへの帰還も達成し、初年度は9位という驚異的な成績をおさめ、英国全土を吃驚させた。
地元のヒーローとしての地位を確立したワイルダー監督は選手たちにフィジカルを鍛える指導をし、上位チームとの力の差を示しつつ硬派なイングリッシュフットボールを志向している。
さらに言うと、シェフィールド・Uはイングランド北東部の名門であり、そのファンの心には尊敬とプライドが根強く存在している。
足の位置がもう少し下で、膝付近を直撃していたらと考えると…
前半11分のホルゲートによるタックルは、意図的で危険な行為と感じられた。三笘はその場で左足を抱え込んで倒れたが、幸運にも重大なケガには至らず、その後は見事なプレイでゲームを支配した。
試合開始直後に嫌な予感がした。なぜか。それはシーズンの終盤に差し掛かったホーム戦で、最下位チームがキックオフの笛が鳴った瞬間からいきなり全力疾走でプレスをかけ、ブライトンに立ち向かったからだ。
しかし技術で数段勝るブライトンがしっかりとボールをキープしはじめ、徐々にポゼッションを上げていく。そして試合の流れをがらっと変える“事件”が前半11分に起こった。
この事件が三笘薫の最初の、しかも試合の流れを大きく変える見せ場となった。けれどもこれが“全くありがたくない”見せ場だった。
三笘が左サイドでボールを受けて、ドリブルで縦抜けを図った瞬間だった。日本代表MFのスピードが瞬時に切り替わり、昨年末に負傷した左足首の状態が万全になっていると見えたその時、シェフィールド・UのDFメイソン・ホルゲートが走ってきて、縦を突く三笘の前をふさぐように右足を高く振り上げた。
「ちょっと危なかったですね。僕も“大丈夫かな”と思いました。ぎりぎり……、ちょっと場所が違ったんで良かったですけど……」
試合直後に三笘にホルゲートの反則タックルについて尋ねると、この答えが返ってきた。
トップスピードに乗ったところで、横移動してきたシェフィールド・Uの27歳DFの右足が唐突に現れ、まるでハードルのように三笘の走りを阻んだ。しかもそのブーツの裏が日本代表MFの左足の太ももの内側に入り、スローで見ると三笘の左足がぐにゃりと外を向いて曲がった
。
「ちょっと場所が違った」と三笘が言った通り、もしもホルゲートのブーツがもう少し下に入り、ひざを直撃していたらと想像したら、背筋が寒くなった。
当然のことながら、三笘はもんどり打って倒れた。
主審の最初の判定はイエローだった。しかしVARで確認後、なんのためらいもなくカードの色をレッドに変えた。
全くボールに行かず、ただ三笘の突進を止めようとした悪質かつ故意の反則タックルだった。しかしこの犯罪的なタックルも、最下位で喘ぐチームのDFとして、クオリティの不足分を埋める苦肉のプレーだったのだろう。
だからプレミアリーグの下位チームとの戦いは厄介なのだ。
しかし、結果的に三笘の復調を感じさせた危険な走りが11対10の数的有利を呼び込み、ブライトンが完全に試合の流れをつかんだ。
クールな印象の三笘も26歳の純粋な青年
ウェルベックの得点を生んだシュートに続き、後半30分の3点目も三笘のプレーからもたらされた。クロスが敵DFの足に当たってゴールを割ると、力強くガッツポーズ
三笘は反則タックルを食らってから10分間ほど左足の太もも部分を何度かさすって、蹴られた箇所を気にする素振りを見せた。
けれども前半20分、右サイドからのコーナーキックをファーサイドから主将のルイス・ダンクがゴール前に折り返したボールをファクンド・ブオナノッテが至近距離で左足を合わせて、ブライトンが先制。すると続く同24分、ダニー・ウェルベックが奪った2点目は、三笘が放ったシュートを相手GKがセーブして転がったセカンドボールから生まれた。
右サイドからパスカル・グロスが放ったクロスに合わせて快足を飛ばし、逆サイドの角度が厳しい位置からではあったが、三笘がダイレクトに左足を当てたフィニッシュを起点としたゴールで2点差がつくと、ブライトンはしばらく安全地帯でボールを回し、試合をマネジメントした。
前半の44分にシェフィールド・Uがコーナーキックからゴールを奪ったかに見えたが、VARでオフサイドが確認され取り消し。ホームのサポーターの怒号が渦巻くなかで前半が終了した。
後半もブライトンは、闇雲に食らいつくシェフィールド・Uをいなすかのようにプレーした。すると2点のクッションをもらって、プレッシャーなくボールを悠々とつなぎ続ける上位チームに対し、数的不利のホームチームの足が徐々に止まりはじめた。
そして後半30分、三笘がグッとギアを上げた。
試合を通じて左サイドで何度も対峙し、翻弄し続けたシェフールド・UのDFジェイデン・ボーグルにトリッキーなドリブルで迫ると、ゴールライン側にボールを出して、すかさず左足を鋭く振ったトゥキックで高速のクロスボールを放った。
ニアにウェルベックが走り込んだがタッチの差で届かず。しかしその先に走ってきていた相手DFジャック・ロビンソンが伸ばした右足にボールが当たって、非情にも自軍のゴールネットを揺らすオウンゴールとなった。
このゴールが決まった瞬間、三笘が両手をグッと天に向かって突き上げ、続いてアウェー・サポーターに向かって力強くガッツポーズをした。
「久々にゴールに絡んだ形ではあったんで(笑)。自分の存在意義を見せないといけないですし。みんな(ブライトン・サポーター)来てくれて嬉しかったので」
こういう話を聞くと、いつもクールな印象がある三笘だが、やはり26歳の純粋な青年としての気持ちも伝わってくる。
このゴールの1分後、ロベルト・デ・ゼルビ監督はお役御免とばかりに、三笘をベンチに下げた。ブライトンはこの後も、三笘がクリエイトした3点目の失点で絶望し、さらに疲労困憊(こんぱい)となったシェフィールド・Uからシモン・アディングラが2点を奪って、5-0で勝利を飾った。
サラーに肉薄する魔法のようなシュートを目撃する日も
「練習では入ることもある」という、左の角度のない位置からのシュート。前半24分のチーム2点目のゴールにつながったのも、新境地と言えるそのプレーだった
「点差がついてからは、前に押し込んでという形を意識してました。後半は相手も落ちたので、こういう結果になるとは思っていました」
試合後、勝ち点が38に伸びてリーグ7位に浮上し、得失点差が8となりこれも偶然リーグ7位となった大勝劇について尋ねると、いつもの冷静な三笘のコメントが返ってきた。
また「コンディションは好調時に戻ってきたようだが?」と話を向けると、「いや、まだまだですね。今日は展開的に楽だったので、あれくらいしないと。今日は(ゴールに)絡んでいますけど、数字には出ていないですし、次に頑張りたいと思います」と語って、ゴールまたはアシストがつかなった試合に決して満足することはなかった。
しかしこの試合、筆者は三笘のプレーに進境を感じる場面があった。それはウェルベックの2点目につながったシュートと、もう1本、後半に放ったシュート。2本とも至近距離からだったが、左サイドの非常にタイトなアングルから放ったシュートだった。
そこで「狙っているのか?」と素直に尋ねた。すると26歳MFはほんの少しだけ微笑み、「いや、イメージはあるんですけど」と話し出すと、「まだまだ改善しないといけないところもありますけど、ああいうところで打ち切れれば、何かが起こると思いますし。練習では入ったりするんですけどね。試合では入らないです、はい」と語ったではないか。
これまではカタールW杯のスペイン戦で見せた『三笘の1ミリ』の形。そう、左サイドのタイトアングルからはゴールラインぎりぎりから折り返すショートクロスがトレードマークだったが、どうやら26歳日本代表MFは、あの位置からのシュートを新たなプレーオプションとして開発しているようだ。
あの位置からはトップスピードのなか、GKの脇をすり抜ける、もしくは股を抜く、球足の速いシュートを針の穴を通すような正確さで蹴ることが要求される。しかし「練習では決まる」というこのフィニッシュが試合でもゴールとなりはじめたら、三笘の脅威はさらに高まる。
そんなゴールを現在のプレミアリーグで意識的に決められるウインガーは、リバプールのエース、エジプト代表FWモハメド・サラーくらいしか思いつかない。
今後は三笘が左サイドの厳しい角度からゴールに近づく度に、“どこにシュートコースがあったんだ?”とゴールとなった後に目を見張る、サラーに肉薄する魔法のようなシュートを目撃する楽しみも増えそうだ。