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 2024/03/31 15:30

FC町田ゼルビア、首位奪取の背後にある集団の力と個々の危機感


仙頭啓矢、チームの核として攻守両面で大きく貢献

仙頭啓矢、チームの核として攻守両面で大きく貢献


 J1への挑戦を初めて迎えるFC町田ゼルビアが、第4節終了時点でリーグ首位の座を獲得している。開幕戦での退場者の影響を受けつつも、ガンバ大阪との引き分けに留まった後、名古屋グランパス、鹿島アントラーズ、そしてコンサドーレ札幌を立て続けに撃破し、連勝を飾った。サンフレッチェ広島と柏レイソルのつまずきを受けて、町田は首位に立つこととなった。


 昨シーズンのJ2を制圧した実力はあるものの、J1に昇格したチームが上位でシーズンを終える例は21世紀に入って稀。また、資金面でJ2時代の優位性があるとはいえ、J1レベルでは平均的なものとなる。開幕前の選手変動や主力選手の怪我など、トラブルも少なくなかった。


 それにも関わらず、FC町田ゼルビアはJ1の頂点に立つ。シーズン序盤の「38分の4」とはいえ、町田のこの驚異的な立ち上がりは注目に値する。



札幌戦を支配したボランチの動き


 町田にとって、16日の札幌戦は自らの流れで試合を落ち着かせ勝利を手繰り寄せた典型的な一戦だった。藤尾翔太による先制得点が53分に生まれ、66分には新戦力イブラヒム・ドレシェヴィッチが追加の一撃。試合終盤に1点を許したが、90分に投入された昌子源と奥山政幸の澄ましたプレーにより、五分の戦いを演じた。布陣を5バックに変え、8分間の延長戦を切り抜けた。


 黒田剛監督が試合を振り返っている。


「冒頭から我々のペースで臨んだのは大きかったです。最初からゲームの主導権を渡さず、しっかりと守って攻撃に繋げてくれたんです。札幌の前試合で見せた後半の弱点を把握していたので、我々のスタミナと集中力で、後半、上回れると信じて試合に臨みました」


 今シーズンのFC町田ゼルビアは、攻撃の面でも藤尾翔太、平河悠のU-23日本代表コンビの活躍が光る。また、守備では新加入のゴールキーパー谷晃生とセンターバックのドレシェヴィッチの貢献も見逃せない。だが、まず気付くべきは仙頭啓矢と柴戸海の両ボランチの重要な役割だ。スペースを消し飛ばし、球際で上手にポジショニングし、攻撃の起点となる素晴らしいボールの奪い方を見せている。


 鹿島戦での勝ち越しゴールは柴戸の見事な起点となったプレイから始まった。札幌戦での初得点は仙頭が豊富な運動量で右サイドへ攻撃参加して創り出し、平河との連携でチャンスを作出した。


 仙頭はその場面について次のように述べている。


「平河悠にボールを預けた時、オーバーラップしてクロスを入れることも頭にありましたが、相手は僕たちの思考を予測していました。とはいえ悠がパスをくれた瞬間、相手の守備陣はボールの動きにとらわれ、悠がその隙に別の行動をとることができれば、得点の機会が訪れると考えていました。遂には悠との連動したプレーにより見事に守備を突破しました」


 そこでは仙頭が右サイドで優れたプレーを見せ、「2対2」の状況を生み出すことに成功した。仙頭から平河へ、再び仙頭へと球が渡り、仙頭が見せた精巧なパスを平河が外から中央への走りで受けた。平河のセンタリングからオ・セフンのポストワーク、最終的に藤尾翔太がボレーシュートを決めるという美しいゴールの流れとなったが、その一連の攻撃の始まりは特筆に値する。



監督黒田の仙頭啓矢に対する賞賛


仙頭啓矢が組み立てた攻撃が藤尾翔太の得点を導いた

仙頭啓矢が組み立てた攻撃が藤尾翔太の得点を導いた


 得点には結びつかなかったものの、38分に仙頭啓矢は平河悠への精密なスルーパスで見事なシーンを作り出していた。


 黒田監督が記者会見でこのように賞賛した。


「柴戸は守備的な役割に徹し、仙頭は積極的に攻撃参加します。仙頭の総合的なサッカーセンスを活かして、彼がパスとシュートの両方を掌握し、オ・セフン、平河、そして藤尾翔太らを適切に使うのが我々の狙いです。彼の走力もチーム内で際立っており、今日のパフォーマンスは特に素晴らしかったです」


 仙頭啓矢は柏レイソルから、そして柴戸海は浦和レッズから移籍してきたばかりの選手であり、どちらも20代後半の経験を積んだミッドフィールダーです。決して元のチームで主役を張れていたわけではなく、代表クラスの選手とは異なる存在です。彼らはむしろ、地道な職人気質であり、チームを引き立てるプレーヤーです。


 しかしながら、この2人は町田のスタイルに見事に適応し、チームに新たな次元をもたらしています。主役ではないけれども、チームのために尽力し、得点シーンの創出に貢献する彼らのプレーは質が高い。


 本シーズンの町田はボール保持についてはなおも改善の余地がありますが、戦術的にはオ・セフンやデュークの頭でのプレーを生かすロングボールを多様しており、パスをつなぐことでテンポを作るというスタイルではありません。それでも、プレッシャーを受けても慌てず、判断が早く、カウンターの際に妙な選択をする彼らのプレーは高品質です。これらの役割を果たしているのが、両ボランチの仙頭や柴戸、そして新加入のドレシェヴィッチらです。



勝利の鍵となる毎日の練習


 チームの好調の理由を問われた仙頭は、次のように応えます。


「週明けからすぐに、次の試合の相手に焦点を置いたスカウティングを参考にした実践的な練習が効果を発揮しているようです。練習は、本当に試合で起こりうるような『現実感』をもって行われ、チームの全員が相手を想定した演習に積極的です。これが徹底的に、理解できるまで続けられるため、習慣化され、選手たちは迷いなく積極的に試合に臨んでいます」


 一方、柴戸も強さの秘密を「日々の練習」に見出しています。


「チームの強みは、全員が基本に忠実で、日々の練習でそれを実現できていることです。練習は、試合での成果の全てを凝縮しており、全員が一つ一つのプレーに全力を尽くすことで、これだけの結果を残すことができています。その積み重ねが信念となり、選手たちに自信をもたせ、疑いの余地なくプレーさせています」


 タレントの集まりとは言えないFC町田ですが、日々の練習からくるハードワークと戦術の実行力がチームに浸透しているのです。この蓄積が連勝の背景にあります。


 さらに柴戸はこのようにも言います。


「いい意味でのタレントの不在といえるかもしれませんが、チームには安易な思考が存在せず、全員が一生懸命に戦っています。その献身性はJリーグでもトップクラスだと思います」


 日常の練習の質の高さを更に強化する動力となっているのは、競争とコーチ陣による適正な評価です。黒田監督の選手マネジメントにおいては、特別扱いはありません。昨シーズンのJ2リーグを顧みれば、試合で結果が出ない場合、直後には選手ラインナップを大胆に変更し、連敗は許しませんでした。


 プレイが振るわなかったことでポジションを下げられた選手もいますが、一方で下位に落とされた選手が前向きに取り組み、「しっかりとした努力でまたチャンスをつかむ」との姿勢で訓練し、ピッチへ戻って貢献しました。これが昨年度の勢いの源となった指揮官の手腕でした。試合を通じて拝見すると、選手のハードワークと戦術の浸透が伝わってくるもので、それがチームの毎日の練習と全体の取り組みによって引き出されています。



隊長昌子源の戒め


負傷から復帰し、チームを支えるキャプテン昌子源

負傷から復帰し、チームを支えるキャプテン昌子源


 新たなメンバーとして加入した昌子源は、元日本代表で現チームキャプテン。33歳の彼は負傷のため開幕戦を欠場し、春の試合復帰を図る中で、ドレシェヴィッチとチャン・ミンギュによる守備ラインが機能しているため、第3節と第4節はスタートからベンチを暖めていた。


「私自身、イボとのコンビでセンターバックを務めてきました。キャンプも上手く行っていましたね。アクシデントは致し方ないことですし、私自身も一日も早くフルで試合に出場し、チームのキャプテンとして皆を牽引していきたい。それに、勝利を重ねるというのは非常に大切なことなのです」(昌子)


 3月16日に行われた札幌戦では、左側のセンターバックとして守備固めで投入され、本シーズン初のピッチ立ちは果たした。柴戸海は昌子の今季初出場をこのように振り返る。


「経験豊かな選手が後ろで声をかけながら、冷静さを保ち、戦況を安定させてくれました。苦しい局面もありましたが、投入された選手たちが違いを見せつけ、チームの活力を回復させてくれたと感じます。本当に、サブを含め全員が一致団結して戦った一戦だったのです」


 藤尾翔太や平河悠のような若い才能が攻撃面を担い、仙頭啓矢と柴戸海がミッドフィールドで機能し、経験豊かな選手たちが勝負所でしっかりと戦いを締める。町田ゼルビアには今、このような良好なチーム構成と役割分担が存在しているのです。


 とはいえ、昌子はチームがリーグ首位に立つことへの喜びを冷静に受け止めていた。


「まだリーグも4節を終えただけです。確かにインパクトは与えられたとは思いますが、首位の座に就いても、一度敗れたらすぐに順位は大きく下がってしまうのが、リーグ序盤の4節や5節です。今後は他チームも私たちを警戒し始めるでしょう。J2では追われる立場に慣れているかもしれませんが、J1で追われる立場は特別なプレッシャーを伴いますから。最終的にどの順位でシーズンを終えるかが最も大事で、優勝できなかったりACLへの出場権を獲得できなかったら、現時点での順位は意味を持たないのです」


 ワールドカップ、フランス、そして鹿島で培った彼の経験は、今季の町田にも大きなプラスをもたらすことでしょう。


「首位での中断期間を迎えますが、もしわずかでも『私たちは首位なのだから』という油断が芽生えたら、次の試合では敗れるでしょう。そういう経験が私にもありますから。もっとも試合から距離がある日の練習でも集中を維持できなければ、この世界ではすぐに失墜します。4節での首位など、真の首位とは呼べないのです」



監督黒田が繰り返す挑戦の精神


札幌戦後、沈静化を図る黒田監督

札幌戦後、沈静化を図る黒田監督


 常に自信満々な言動で知られる黒田監督だが、札幌戦を終えた後の記者会見では、むしろチームへの警鐘を鳴らすようなコメントを残した。


「この一失点を、実は10失点分の重みとして捉え、町田へ帰った後は情熱的な反省とともに、もう一度クリーンシートで勝利を収めるチーム作りに挑戦する」と語った。


 「4節終了時点での首位」に関しても控えめな言葉を選んでいた。


「我々は新しいチームです。そのため『これで勝負に出られる』という錯覚は抱いてはならない、と考えています。挑戦者の心を常に忘れずに、メンタリティを研ぎ澄まし続けながら、一歩一歩前進していく必要があります。常に上位に食らいつき、下位に沈まないような精神を持ち続けることで、我々が努力してきた成果が連勝へと繋がっているのです」


 いかな新昇格チームであれ、強烈なスタートダッシュには常に理由があります。町田は昨シーズンの実績を維持し、さらに進化を遂げています。これまでのチーム編成、キャンプからの努力は疑う余地なく成功を収めていると言えます。いくら「4節での首位」とはいえ、過度な評価や満足感に浸ることなく、謙虚に次へと進む必要があります。とはいえ、昌子のような場を支配する人材がチームにいるのは、2024年の町田にとって計り知れない強みでしょう。


 挑戦していく精神を見失わず、練習の質を高め、チーム一丸となる結束力を維持し続けることができれば、町田ゼルビアが生み出す新たな旋風はこれからも続いていくことでしょう。勢いだけでは片付けられない、町田ならではの特別な要素が、このチームには確かに存在しています。