アジアカップ振り返り_4-2-3-1フォーメーションでのハイプレスへの対応
アジアカップ振り返り_4-2-3-1フォーメーションでのハイプレスへの対応
日本がアジアカップで対面した大きな課題の一つは、相手の前からのプレッシャーのもとでボールをつなぎ切ることができなかったことでした。
今回は、そうした課題を解決するために、どうハイプレスを避けるかに焦点を当てて考えてみます。個々の技術でも対応可能ですが、戦術レベルで考えた方が、個々に依存せずに一貫性を保つことが容易だからです。
現代サッカーにおけるハイプレスの回避策
現代サッカーにおいて、レベルの高いチームでは守備時にハイプレスをかけることが一般的になっています。攻め込んだ後、ボールを失ったらすぐにプレスをかけて取り返す高効率なスコアリングの必要性が認識されているためです。
そのような状況で、ハイプレスを避ける戦術も進化しています。代表例が、フェイクSBやフェイクCBです。4-3-3のSBやCBが前に出て、3-2-5に近い形に変化し、ハイプレスを回避する方法を取り入れています。以下は、左SBがフェイクSBとして動く様子を図解します。
4-3-3の左SBがフェイクSBとして動く様子(黄色のプレイヤーが移動)
左SBがフェイクSBになった後の3-2-5の形
このように形を変えることで以下の特長が生じます。これによりハイプレスを避けやすくなっていると考えられます。
・LSBが中央に入ることで、相手が追いかけにくく、マークが外れやすい
・最終ラインが3人となり、パスの受け手が増える
・以下のようなトライアングルやダイアモンドが形成され、パスがつながりやすい
- LCB, LSB, LIHのトライアングル。難しい場合はLWGも使用できる
- RCB, LSB, DH, CFのダイアモンド
- RCB, RSB, RIHのトライアングル。難しい場合はRWGも使用できる
・LIHやRIHがハーフスペースにいて、相手のDFが追いかけにくい
特に最後のポイントは重要であると感じています。マンチェスターシティでも、RIHやLIHが下がって上手くボールを受けてプレスを避けるシーンが多々見られます。最近では5バックを採用するチームが増えていますが、RIHやLIHを追いかけるためにも使用されていると思います。
4-2-3-1フォーメーションはハイプレスに対して脆弱か
日本がハイプレスに苦戦を強いられた4-2-3-1との違いを検証します。
4-2-3-1フォーメーション
上記の3-2-5との主要な違いは、以下の通りです:
- ハーフスペースにいる選手が少なく、マークをされやすい
- 各プレイヤーのポジショニングが難しく、パスを後ろ向きに受けることが多い。特にWGが幅を取るとサイドで特に顕著
以上の点から、ハイプレスに弱くなっているのではないかと感じています。世界的に4-3-3やそこから3-2-5に変化する戦術が主流となっているのも、上記の問題が原因であるように思います。
ハイプレスをどう回避するかの考察
上記の特徴を踏まえた上でハイプレスをどう回避するかを考えると、以下のような改善策が示唆されます:
4-3-3への変更とフェイクSB戦術の導入 – 主流
まず最初の改善策は、4-3-3への単純な変更とフェイクSB戦術の試行です。日本はブラジル戦やチュニジア戦で4-3-3を採用しましたが、アンカー(DH)が狙われ、ショートカウンターを何度も受けて敗れました。ただし、その際にフェイクSB戦術は試していませんでした。逆にワールドカップ後の4-2-3-1でフェイクSB戦術を試し、中盤が3人となって攻撃が停滞しましたが、今回は4-3-3でフェイクSBを試す価値があるかもしれません。
4-2-3-1でCFも下がってくる – ブライトン風
4-2-3-1でハイプレスを回避する方法としては、OHやCFが動きやすく前後左右に動いてボールをもらう方法があります。ブライトンはこの動きをよく取り入れています。OHだけでなく、CFも深く下がってボールを持ち、レイオフというプレーをします。日本代表でも久保建英や鎌田大地がこの動きをしますが、CFが同様の動きをすることは少ないです。CFが下がってボールを持つことも改善策の一つと言えるでしょう。
4-2-3-1から3-2-5への変化 – ジローナスタイル
4-2-3-1形式から3-2-5へと変貌する戦術は一つの選択肢です。この変化を実践しているのがジローナFCです。ジローナの柔軟な戦術調整はかなり複雑であり、詳細な説明は別の記事で行う予定ですが、彼らは偽SB戦術を駆使しながら最終的には3-2-5のフォーメーションに落ち着きます。その3-2-5による戦術のメリットを活かし、ジローナは勝利を重ね、勝ち点を積み上げる勢いが止まりません。こうした戦術は日本が取り入れるべき点の一つだと考えられます。