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 2024/05/09 12:39

アジアを掌中に収めた大岩ジャパン、その勝因は全員の結束力にあり 立役者は日本の守備の要谷口彰悟


勝利のトロフィーを高々と掲げるキャプテン藤田譲瑠チマ(8)は、同時に大会MVPを獲得

勝利のトロフィーを高々と掲げるキャプテン藤田譲瑠チマ(8)は、同時に大会MVPを獲得



「確固たる自信」で挙げた決勝ゴール、「自信の欠如」でも防いだPK


 AFC U23アジアカップ決勝戦の後、感動のあまり涙を流すGK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)の姿が印象的だった。


 アディショナルタイムは11分の掲示だったにも関わらず、実際には17分以上の延長となり「まるで延長戦をやったかのよう」と大岩剛監督は振り返る、まさにアップダウンの激しい時間帯を過ごした。


 5月3日に繰り広げられたこの試合は、ウズベキスタンが序盤に主導権を握るものの、その後ガス欠を起こして次第に日本のリズムに。大岩監督の指揮のもと、早急な選手の交代を敢行し、勢いを盛り立てた。


 アディショナルタイムが始まってすぐに、試合は急変した。DF高井幸大(川崎F)の見事なインターセプトから発展した、創造的な攻撃連鎖が、ここまで無失点だったウズベキスタンの守備を完全に崩した。MF藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)から途中出場のMF荒木遼太郎(FC東京)へ、そして同じく途中出場し右ウイングに位置した山田楓喜(東京V)まで。


「自分は自信を持っていた。自分の左足で試合を決められるという自覚があり、それを披露するために準備もしてきた」と山田楓は語る。


 貴重なその左足がボールに触れた瞬間、今大会初めてでもあろうウズベキスタンのゴールを揺さぶり、勝利したと思われた瞬間、歓喜がピッチ上に広がった。


 だが、サッカーの神様はよく知られたように、意地悪で有名。シンプルなハッピーエンドはおろそかにされがちである。延長されたアディショナルタイムを通して、日本はDF関根大輝(柏)の不運なハンドボールでPKを与えてしまった。


 このピンチの瞬間にGK小久保が立ちはだかる。「正直なところ、自信はあまりなかった」と本人が述べる通り、PK阻止は彼の得意とする部分ではないにせよ、トーナメント入りして以降、GKコーチや他のGKと共にPK対策に取り組んでいた。また、相手選手のデータもしっかりと把握していた。


「PKキッカーの傾向についてはGKミーティングでも確認していました。中国戦でも同じような準備をしていましたが(1人退場した後の対策)、この小さな努力が結果として形になったんです」と小久保は言う。


 機敏なリアクションでサイドに飛び、難しい軌道で飛んで来たボールを見事にストップ。チームとしての勝利を掴むための大切な一撃だった。


 その後もCKなどの連続で厳しい局面が続き、小久保は感情のコントロールに苦労しながらも、18分の長いアディショナルタイムを耐え抜き、1-0で勝利。ベンチにいた選手たちも一斉にピッチに飛び出し、本当の意味での勝利の瞬間が訪れた。


「チームを守り抜きたいという強い意志がありました。日本を代表してアジアチャンピオンになることは、多くの応援を受けている中で、自分にとっても大きな感動を覚える出来事でした」と小久保は胸に刻んだ。


 そして、2016年の栄冠以来、日本にとってこの回の優勝は歴史に残る二度目の快挙となった。



決勝戦の本質


決定的な得点を挙げた山田楓(右)。勝利への流れは、理想と現実の狭間で生まれた

決定的な得点を挙げた山田楓(右)。勝利への流れは、理想と現実の狭間で生まれた


 感動的な幕切れを飾ったこの決勝戦では、目論見通りに進んだわけではなく、意図とは裏腹の展開が繰り広げられた。


「思うように展開できなかったこと、また求めていたゲーム進行とも異なっていたので、率直に言って悔いが残ります」


 こう語るのは、インサイドハーフの位置で出場したMF山本理仁(シントトロイデン)。前から果敢にプレッシャーをかけ、日本のビルドアッププレーを徹底的に潰しにかかったウズベキスタンに対し、日本のオフェンスラインは前半45分間機能停止に追い込まれてしまった。


「決勝戦という大一番にふさわしい緊張感が、プレーヤーたちに『失敗してはいけない』というプレッシャーを与え、選択肢を狭めてしまった部分は否めません」(山本)


 引き気味で日本の中盤を封じ込める戦術を取ったウズベキスタンに対して、コーチは「解決法を提示はしていたものの、予想を超える相手圧力や積み重なった疲れのせいで、思うようにはいかなかった」と振り返った。


 これまで日本の戦術を警戒し、守りを固める戦略を採ってきたチームにとっては、まさにアジア予選的な抗争が待ち受けていたが、この試合では全く新しい局面を迎えた。


 しかし、逆境の中でも耐え忍ぶ強さを手に入れることは、チームの成長過程の一つでもあった。後半戦からは戦術を変更し、大岩監督自らが「望んでいた展開と現実のせめぎ合い」と評した。

「無理して低い位置でパスをつなぐ必要はなかった。私がピッチに立ったときからは、すでにロングボールでセカンドボールを拾う戦い方に切り替わっていた」と山田楓は説明する。


 しばしば日本選手が練習で培ったプレースタイルに固執し、勝利への道を遠ざけがちだが、今大会のチームは適時に方向転換できていた。


 そして試合が進むにつれて、日本の体力「貯金」が徐々に効いてきた。体調管理に全力を注ぎ、トーナメント中のトレーニング量と強度を抑制しながら、選手のローテーションを駆使し、疲れを蓄積させない戦略を取ったことが、日本に有利をもたらした。


 次々に交代を余儀なくされるウズベキスタンと異なり、日本は戦略的な交代でゲームのリズムを自らの手に引き寄せ、アディショナルタイムでの決定的得点に繋げることに成功した。


 一喜一憂の連続となるほどの緊迫した展開に見舞われたものの、時を味方につけた日本の戦い方は、偶然ではなく確固たる意図のもとに存在していた。



共闘の成果、力の結集


勝利の裏でチーム全体を支えたスタッフの団結が、勝利をもたらした要素の一つとなった

勝利の裏でチーム全体を支えたスタッフの団結が、勝利をもたらした要素の一つとなった


「サポートチームが非常に手厚く、我々選手にとってプレーへの集中を妨げるストレスは一切なかった。その点には特に感謝したい」


 決勝戦のアフターマッチでは、そのように述べるのは関根だった。


「自分自身も傷を抱えていましたが、スタッフのおかげで完全な回復を遂げ、全試合出場が叶いました。それには本当に感謝の気持ちでいっぱいです」


 キャプテン藤田も含め、中国戦での捻挫のように軽微な負傷者が複数いたが、試合ごとの手厚いケアと体調管理、そして勝利へ導くためのタイミングの良い選手起用が、スタッフの絶妙な裏方仕事によって支えられていた。


 睡眠管理のための最新機器利用、専属シェフの提供する栄養満点の食事、リラックスルームの最適な設計、そしてメディカルスペースをうまくコミュニケーションの場として活用することなど、過去の大会経験を生かし、宿舎から練習場、試合会場にいたるまで、選手支援体制は完璧だった。


 今大会のゲストである本間一憲総務は、ロンドンと東京のオリンピックにも関わってきた裏方のベテラン。本間総務の目にも「スタッフ一同は自身の業務と役割を完璧に果たし、僕が何かを指示する必要性はほとんどなかった」という程の高い完成度を持っていたようだ。


「こちらから声をかけなくても自主的に動けるスタッフばかりでしたし、確かな経験を持つ者も揃っていました。上田達也総務も若い世代の代表チームでアジアを勝ち抜いた経験があり、彼にとっても、集大成の大舞台だったと感じます。そうしたベテランスタッフの力が結集し、強い一体感が醸成されていたんです」(本間総務)


 本間総務が気を付けたのは、「負けた後の対処法」という一点。グループステージでは中国、UAE、韓国という屈指の対戦相手がおり、いつ敗北が訪れてもおかしくない状況だった。選手の士気が揺らぎ、チームの団結力を保ちつつ、逆境を乗り越える方向に導けるかが鍵となる。経験則から、そこがまさにターニングポイントとなると予感していた。


「韓国戦での敗北の後、スタッフはどのように声をかけていくのかが重要でした。しかし、スタッフはみんなで「次へ」という言葉をしっかりと広め、監督の落ち着きもあって、チームの調和は保たれました」(本間総務)


 また別の視点として、本間総務は裏でのMVPとも言える日本代表DF谷口彰悟(アル・ラーヤン)の価値を高く評価している。カタールで経験を積むワールドカップ選手がチームの前で語ってくれたことの影響力は非常に大きかった。


「たとえ似たような話でも、私たちがするのと谷口選手が話すのとでは全く響きが違います。私も一生懸命に頷きながら話を聞いていましたが、彼の存在が本当に心強かったです」


 アジア特有の戦いの難しさ、団結の重要性、逆境への対処方法、そして代表選手として持たなければならない姿勢について、特に韓国戦の敗北後、チームが迷いを抱いていた時に谷口が示した道標は、非常に大きなものであった。


 日本サッカーがこれまで培ってきたノウハウ、そうした遺産が勝利の基となっていたことは明白であり、勝ち取った栄光は「選手全体とスタッフ全体の力の結集」という言葉に込められていた。大会を通じて、選手たちの間で自然と広まったこのフレーズは、単なるスローガン以上のもの、つまりチームという存在の核心を表す言葉でもあった。