大谷翔平 ドジャースに移籍、「両リーグMVP」のチャンス
大谷翔平がエンゼルス時代に2度のMVP(ともに満票)を受賞し、来季からはドジャースに加わり、ナ・リーグでロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)、ムーキー・ベッツ(ドジャース)、フレディ・フリーマン(ドジャース)などといった猛者たちとMVPを争うことになる。1931年以降のMVP投票では異なる2チームでMVPを受賞した選手は5人おり、両リーグでのMVPはフランク・ロビンソンのみであり、大谷には「史上2人目」の期待がかかる。
MVP投票が開始された1931年以降、異なる2チームでMVPを受賞したのは、ジミー・フォックス(1932~33年アスレチックス、1938年レッドソックス)、ロビンソン(1961年レッズ、1966年オリオールズ)、バリー・ボンズ(1990年・1992年パイレーツ、1993年・2001~04年ジャイアンツ)、アレックス・ロドリゲス(2003年レンジャーズ、2005年・2007年ヤンキース)、ブライス・ハーパー(2015年ナショナルズ、2021年フィリーズ)の5人。このうち、アとナの両方で受賞したのはロビンソンだけである。
ドジャースは大谷のほかにも、ムーキー・ベッツが2018年にレッドソックス、フレディ・フリーマンが2020年にブレーブスでMVPを受賞しており、「異なる2チームでMVP受賞」のチャンスがある。ベッツはア・リーグのレッドソックスで受賞しているため、大谷と同様に「史上2人目の両リーグMVP」を達成するチャンスがある。
ナ・リーグのMVP争い
今季のナ・リーグのMVP争いは、アクーニャJr.が1位票、ベッツが2位票を独占。3位票と4位票はフリーマンとマット・オルソン(ブレーブス)が分け合った。来季もこの「ビッグ4」の争いになるとは限らないが、本塁打と打点の二冠に輝いたオルソンがファイナリストに残れなかったハイレベルなMVP争いに来季から大谷も加わることになる。同僚も含めた強敵を上回り、「史上2人目の両リーグMVP」を達成することができるか注目だ。
また、MVP受賞直後のオフにFA移籍した選手は大谷が4人目。ただし、うち2人はトレードで移籍しており、FA移籍に限ると、大谷のほかにはバリー・ボンズしかいないという。
ボンズは1985年ドラフト1巡目(全体6位)指名でパイレーツに入団し、翌1986年には早くもデビューして113試合に出場。1990年に打率.301、33本塁打、114打点、52盗塁、OPS.970の活躍を見せて自身初のMVPに輝くと、パイレーツはこの年から3年連続地区優勝。ボンズは1991年もMVP投票2位、1992年には2度目のMVPを受賞し、最高の形でFAとなった。
ボンズは当時の史上最高額である6年4375万ドルでジャイアンツと契約。ここから15シーズンにもおよぶジャイアンツの「ボンズ時代」がスタートし、ボンズは移籍1年目の1993年に打率.336、46本塁打、123打点、29盗塁、OPS1.136という素晴らしい成績を残して本塁打・打点の二冠に輝いただけでなく、2年連続3度目のMVPを受賞し、前年72勝だったジャイアンツは惜しくも地区優勝には届かなかったものの、103勝と大きくジャンプアップした。
結局、ボンズは2007年シーズンを最後に43歳で引退するまでに、通算762本塁打を放ってハンク・アーロンのメジャー記録を更新。2001年から4年連続受賞するなど、MVPは史上最多の7度を数えた。ステロイド問題もあって殿堂入りを果たせていないボンズだが、1992年オフにジャイアンツがボンズを獲得したFA補強は大成功だったと言って差し支えないだろう。
MVP受賞直後の選手
MVP受賞直後の選手が移籍するのはボンズに続いて2人目ということもあり、「ドジャース・大谷」にかかる期待は非常に大きい。ドジャースは11年連続でポストシーズンに進みながらもワールドシリーズ制覇は1度だけ(2020年)という状況であり、大谷にはレギュラーシーズンでの活躍はもちろんのこと、ポストシーズンでチームを勝利に導く働きが期待されることになる。ボンズはチャンピオンリングを獲得できないままキャリアを終えたが、ボンズの二の舞だけは避けたいところだ。
なお、MVP受賞直後のオフシーズンに移籍した選手は、ほかに2003年のアレックス・ロドリゲスと2017年のジャンカルロ・スタントンがいる(いずれもトレード移籍)。また、MVP受賞直後のオフシーズンにFAとなった選手は、ほかに1989年のロビン・ヨーント、2007年のロドリゲス、2022年のアーロン・ジャッジがいるが、いずれも元のチームと再契約を結んでいる。