日韓対決、想定外の展開 ただの一戦で終わらない戦略と次への布石
日本は優勢にもかかわらず、勝ち点で韓国に後れをとった
両国からの新たなメンバー起用
日本と韓国は共にAFC U23アジアカップのグループステージで2勝を挙げ、パリ五輪予選としての役割を果たしながら、8強入りのチケットを手に入れた。
残るは5月22日の日韓戦のみで、この戦いの結果がグループ首位か、それとも2位通過かを決めることになる。それだけでなく、「日韓戦」という大きな舞台にどれほど重きを置くかも両陣営の戦略で共通していた。
日本の大岩剛監督と韓国の黄善洪監督はスターティングラインナップを通じて、その意図をはっきりと示した。日本は前回のゲームから7人、韓国は10人と、それぞれ大きくメンバーを入れ替えてきた。一連の移動は、日本の監督が「6試合全体を見据えたマネジメント」として強調し、「計画どおり」にノックアウトステージへの体力の温存を最優先した戦略を反映している。
今大会は基本的に2日おきの試合が続き、「同じメンバーを使って現代サッカーのハイレベルな試合を展開し続けることは困難」と大岩監督は序盤から指摘していた。もし、この戦いが連勝の成果を無にし進退を分ける戦いになっていたら、やむを得ずリスクを背負う必要があった。しかし、2連勝のおかげで「プラン通り」の選手起用が実現したのだ。
その結果として、日本からはGK野澤大志ブランドン(FC東京)、DF半田陸(G大阪)、MF田中聡(湘南)という今大会初出場の三名、そしてFW内野航太郎(筑波大学)が初のスターティングメンバーとなり、戦列に名を連ねた。
一方の韓国も、先発メンバーの約半数である5名が大会初出場を飾った。互いにノックアウトステージへの一発勝負の前に、戦力の温存を図り、出番がなかった選手たちをここで試すことで、彼らを即戦力化していく狙いが見える。
戦術面での対応の甘さが露呈
新鮮さを期待された日本のスターティングメンバーは機能不全にひんした
日韓両国のチーム運営に大きな違いは認められなかったが、それぞれのアプローチには顕著な差があった。
日本は、「どの選手も同じ水準のプレーができる」という理念を持ち、明確な戦術モデルとプレーの原則に基づいていることが大岩剛監督の方針である。この理念に従い、今回も先発メンバーの変更にもかかわらず、同じフォーメーションと戦術的な基盤で試合に臨んだ。
一方で、韓国は異なる状況にあった。出場停止や負傷によりセンターバックの選手が不足している事態を背景に、黄善洪監督は守備的な5-4-1を採用し、戦術を大きく変更して日本との対戦に備えた。
「予想以上に引いた姿勢を見せられたのは、予測外だった」と大岩監督が認めるように、この戦術変更は日本側のスカウティングを完全に裏切るものだった。「5バックの布陣は想定外でした」と、初先発のFW内野航太郎も認めており、日本は予期せぬ韓国の陣形に対して、慎重な立ち上がりを余儀なくされた。
「前半はもっと前向きな選択をして、シュートを放つなど攻撃的な姿勢を示すべきだった。消極的なプレーに終始してしまった」と、DF鈴木海音(磐田)が振り返るように、積極的なアプローチが見られず、得点機会をほとんど作り出せずに終わってしまった。
守備面では、日本があまり使わない3バックの中央の選手を積極的に前に出す韓国のビルドアップに対し、適切な対応ができずに混乱が生じた。「誰が対応するべきかが明確ではなく、守備面でももっとコミュニケーションを取るべきだった」とは内野航太郎の言葉で、この迷いが致命的な影響をもたらした。
試合の振り返りでは、後半の失点や逃したチャンスが敗因として指摘されることが多いが、前半の45分間に何も起こせなかった点も重要な敗因の一つである。
相手の不意をつく戦術変更に適応することは国際大会の重要な局面でしばしば求められる能力である。この点での日本の対応力不足は、確かに指摘されるべきであろう。
準々決勝への「勝利が必須」というプレッシャー
昨年秋のアジア競技大会の初戦で日本がカタールを破った
後半の18分には日本が一斉に交代をして試合展開を変えようとしたが、その攻勢も虚しくコーナーキックからゴールを許し、突如ビハインドに転じた。その後にチャンスは幾度となく訪れたものの、最終的にはスコア0-1で惜敗という結果に。対韓国では勝利を叶えることができなかった。
シュート数14対6、ボール支配率61.1%対38.9%、空中戦の勝利率63.6%対36.4%、接地戦の勝率も57.0%対43.0%など、スタッツ上では日本が上回っていた。しかし、枠内シュートは日本が2本に対し韓国が3本で、最終的に得点を挙げたのは韓国の方だった。これが結果的に勝敗を決定づけたと言えるだろう。
選手個々も「決定機を最後まで決めきる」とMF松木玖生(FC東京)が言及する通り、いわゆる「決定力」に焦点を当てる必要がある。これまで光を見なかったフォワード陣は、悔しい結果を次のステージで反映し、改善したいと共感している。
しかし、団体戦としての学びはまた別の視点を要求している。相手のスタイルに合わせ足並みを揃えることなく、自分たちのサッカーを貫けなかった点が課題として残る。もしこれが力量差によるものであれば受け入れがたいが、アジアの場ではそんな落差は稀だ。
「アジアのチームと対峙する際、彼らに引きずられず自分たちのスタイルを貫くことが重要」と松木玖生が強調するように、受け身に徹するのではなく、試合開始早々から積極的に仕掛けていくべきだろう。
敗北から学びを得てそれを次なる戦いで活かすことは、この段階で、できるだけポジティブな再建に結びつけることだ。
途中出場したMF山本理仁(シントトロイデン)は次のように言った。
「勝つことが最優先ですが、敗退しては居ません。オリンピック出場権を獲得し、この1敗がチーム団結と強化の契機になれば、それが次なる進歩へのステップになる。これからも積極的にチャレンジし、前向きにすすむので、そういうチームだと思います。」
次の相手はホスト国のカタールだ。先のアジア競技大会のグループステージで対峙した際、日本はFW内野航の活躍もあって3-1で勝利を収めた。佐藤恵允(ブレーメン)も内野航も過去の経験から良いイメージを持っており、恐怖心を抱く必要のない相手だ。
アウェイの環境や不公平な判定への懸念は演技を縮小させかねないが、そうした困難を乗り越えることができれば、チームの資産と自信がひとつ増える。
若手のためには、開催国を相手にオリンピック出場権を賭けた緊張感ある試合で戦うという経験は、彼らの成長にとって貴重なものだろう。
「絶対に負けるわけにはいかない」そういう状況の中で、次のラウンドに踏み込むための勝利を目指し、自発的なプレースタイルを展開してほしい。その姿を見ることを期待している。