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 2024/03/29 03:13

イングランド代表、プレミアの疲弊を露呈しEURO2024に懸念


ブラジルとの試合は長い間待たれた一戦。主力選手のケインらを欠いたイングランドは後半に入り疲労の色が濃くなり、試合終盤に不意をつかれ敗北を喫した。

ブラジルとの試合は長い間待たれた一戦。主力選手のケインらを欠いたイングランドは後半に入り疲労の色が濃くなり、試合終盤に不意をつかれ敗北を喫した。

 プレミアリーグの一時休止中、国際マッチウィークが繰り広げられ、イングランド代表は3月23日に名門ブラジルとウェンブリーで対峙した。親善試合とはいえ、敵を打ち負かしてEURO2024に勢いを持ち込むことが目標だったが、0-1のスコアで惜敗。イングランドが直面する課題がこのマッチで改めて明らかにされたのである。


聖域ウェンブリーにて敵に屈すること無用


 ジョン・クロスは、『デイリー・ミラー』紙の主任フットボール・ライターとして知られている。北ロンドンの『イズリントン・ガゼット』での記者生活からスタートし、速やかにアーセナル内での強固な情報網を築いた彼は、その後2002年にミラー紙でのキャリアを開始し、『アーセン・ヴェンゲル』の著者とし一世を風靡した。2022年より英国のフットボール・ライター協会会長を務めている。彼の筆跡や名前は、英国サッカーの追跡中に何度も目にすることだろう。

 ジョン・クロスは穏やかな性格で知られ、現場ではいつも和やかな態度で評価されているが、イングランドがウェンブリーでブラジルに0対1で敗北した試合直後には、慣れ親しんだ彼の表情にもわずかに困惑が窺えた。「もちろん、対戦相手が非常に高い質を誇るチームで、緊張感あふれるプレミアリーグシーズンが影響していることは理解している。だが後半にイングランド選手たちの疲れが窺えたのは否めない」と彼は速いペースで述べ、失望の色が浮かんでいた。

 ジョンが指摘するように、相手は名門ブラジルだ。W杯5回の優勝に輝き、王国とも呼ぶにふさわしい。それでも、聖地ウェンブリーでは、イングランドのファンはどんな相手であろうと、自国代表が敗北することは受け入れがたい。

 実際に、ブラジルとの直近5試合では勝ち越しているものの、この日はウェンブリーでの無敗記録がブラジルによって破られた。

 ブラジルは2026年W杯予選でコンメボルの強豪たちに続けて敗北を喫しており、対照的にイングランドはEURO2024予選を無傷で切り抜けている。

 この状況では、イングランドはEURO2024の前哨戦でブラジルを打ち破ることで勢いを増す絶好の機会と位置づけていたのだが、結局はウェンブリーの歴史に新しいページを刻む敵の若きストライカー、エンドリッキによって記録更新の打撃を受け、ブラジルの手に敗北を託す羽目になった。


ベリンガムとライスの存在で華やぐ中盤


としを感じさせない輝きを放つ中盤。ベリンガムは今季のマドリードでのプレイがますます磨きがかかり、3日後のベルギー戦にて最後の瞬間に劇的なゴールを
としを感じさせない輝きを放つ中盤。ベリンガムは今季のマドリードでのプレイがますます磨きがかかり、3日後のベルギー戦にて最後の瞬間に劇的なゴールを

 ドリヴァウ・ジュニオール新監督の初陣で、敵地での親善試合とはいえW杯予選の不振からいち早く脱却したいブラジルは、流れを変えるため、勝利という“特効薬”にすがりついたということだろう。そんな「勝ちたい」という気持ちが前に出ていた。

 それはアンカーで起用されたニューカッスル所属のブルーノ・ギマランイスが、プロフェッショナル・ファウルと言えば聞こえがいいが、汚れ役を自ら買って出て、イングランドのカウンターの芽を狡猾な反則で止めまくったことでも明らかだった。

 一方、イングランドは強国相手には善戦しながらも惜敗するという、W杯での敗退パターンをここでも繰り返して、冒頭のジョンをはじめ、常にメジャー大会で優勝すると信じて疑わないフットボール発祥国のファンをがっかりさせた。

 ただし、今季は移籍先のバイエルン・ミュンヘンでゴールマシンとしてさらにすごみを増した絶対的エースである主将のハリー・ケイン、そしてアーセナル優勝の鍵を握るブカヨ・サカが揃って小さな故障で今回の代表メンバーから外れていた。

 またセンターバックもジョン・ストーンズのパートナーで、久々の実戦となるハリー・マグワイアが試合勘を取り戻せていない印象が否めず、ケインの代わりにキャプテンのアームバンドを巻いたカイル・ウォーカーがハムストリングを痛めて前半20分で負傷交代するというアクシデントもあった。

 しかしながら、今季レアル・マドリーでクリスティアーノ・ロナウド、リオネル・メッシの次を担う逸材であることを証明しつつあるジュード・ベリンガムと、昨夏にアーセナルに移籍し、完全にレギュラーに定着して1億ポンド(約195億円)の価値があることを見せつけているデクレン・ライスが入った中盤は豪華絢爛だった。大型選手でありながらスピード満点で足元の技術も高い2人が築く攻守のバランスは緻密で、イングランドのミッドフィールドの将来が本当に楽しみになった。

 またサカが右サイドに復帰して、この試合では右サイドでプレーしたフィル・フォーデンを左サイドに動かし、22歳アーセナル・ウインガーと23歳マンチェスター・シティのウインガーの両翼がセンターフォワードのベテラン・ケインを盛り立てるという形が定着すれば3トップも安泰。2年後の2026年北米W杯にも期待が膨らむ布陣になる。

 さらにはこの試合で負傷退場したウォーカーの右サイドバックのポジションには、リバプールのトレント・アレクサンダー=アーノルド、そしてチェルシー主将のリース・ジェームズという、どちらを選んでも世界最高峰という人材が控えており、全く心配はない。


ストーンズの相棒とGKのクオリティが上がれば隙がなくなるが…


戦力充実のイングランド代表で数少ない不安がGKだ。2018年W杯からレギュラーを務めるピックフォードも、他国の名手と比較するとクオリティ不足が否めない
戦力充実のイングランド代表で数少ない不安がGKだ。2018年W杯からレギュラーを務めるピックフォードも、他国の名手と比較するとクオリティ不足が否めない

 レギュラーで若干の不満があるのは、GKのジョーダン・ピックフォードだ。2017年にエヴァートン移籍を果たしてから、高いセーブ能力が買われて代表にも選出されて、翌2018年からは完全にイングランド代表の正GKに定着している。しかし、近年の超一流GKの基準からすると、ビルドアップで最終ラインとの連係に参加するだけの技術とプレースピード、そして攻撃の起点となるセンスが少々足りない。

 一時はアーロン・ラムズデールの台頭に期待したが、所属するアーセナルでスペイン人のミケル・アルテタ監督の評価が今ひとつで、今季は42歳青年監督と同国人のダビド・ラヤに定位置を奪われてしまい、精彩を欠いている。

 このGKとストーンズのパートナーのクオリティが上がれば、イングランド守備陣のグレードも一気に上がり、隙のないチームになるのだが、そこはやはり代表チームならではの難しさだろう。大金をはたいて他国から有望選手を連れて来て穴を埋めることはできない。しかしそうした弱点をそのまま放置しなければならないところも、代表戦の面白さにつながる。

 と記したところで、イングランドのU-16代表でプレーしながら、両親が離婚したことで父親のウィルソン姓から母方姓に変更し、プレーする代表もイングランドからウェールズに変えたライアン・ギグスのことを思い出した。

 この代表変更により、当時は中盤フラットの4-4-2だったイングランド代表がマンチェスター・ユナイテッドの両翼を担った右のデイヴィッド・ベッカム、左のギクスという黄金のウインガーペアの片翼を永遠に失うことになった。

 現在の戦略なら、3トップの左サイドには右利きのアタッカーを入れるのが定石となっていて、当時のイングランド代表で左サイドを押しつけられたジョー・コールなどは、今なら絶好の人材だった。

 けれどもウインガーは縦抜けしてクロスを放り込むことが仕事だった1990年代から2000年代のイングランド代表では、ギグスが隣国ウェールズの選手となった時点から、不思議なことに全く左利きの有望選手が現れず、常に左のウインガー不在を嘆くことになった。

 とはいえ、こうした代表チームならではの戦力的な穴を愛国心で埋めて勝利を手にするというカタルシスもある。不完全を気力で埋めて栄光をつかむフットボールの美しさに人々は感動するものだ。


代表戦の日程と招集ルールを考え直すべき


イングランド国内で物議を醸したのが、ブラジル戦から選手が着用した新ユニホームのデザインだ。ネックの後ろ部分に施された十字のカラーリングに対して猛反発する声も
イングランド国内で物議を醸したのが、ブラジル戦から選手が着用した新ユニホームのデザインだ。ネックの後ろ部分に施された十字のカラーリングに対して猛反発する声も

 話が少し横道に逸れたが、こうしたどの国にもある代表チームならではの人材不足に加えて、筆者がイングランド代表に抱く不安は2つある。
 まず今回のブラジル戦の直前に英メディアを騒がせた代表ユニホームに関する論争にも見られる、ピッチ外の問題だ。

 現在、イングランド代表のユニホームはナイキが製作しているが、先日発表されたEURO2024用の最新モデルの首の後ろ部分に付けられている十字が一部のイングリッシュの大ひんしゅくを買った。

 イングランドの国旗は白地に赤十字である。ところが何を思ったのかナイキは、この伝統的な赤十字に紫、ブルー、ピンクを足して、新たなシンボルを作り出してしまったのである。

 これが愛国心の強いイングリッシュを刺激した。右翼系の大衆紙『デイリー・メール』は一面で「イングランド・ファン激怒」と見出しをつけて真正面から批判した。

 しかもブラジル戦の試合前に、インタビュアーがガレス・サウスゲート監督にナイキの処置を「どう思うか?」と質問を浴びせる始末。本来なら晴れの舞台であるブラジルとの親善試合を前に余計な雑音が生じた。

 こういうところでイングランドはまたも、人気抜群でコマーシャルな要素が強く、豊富な資金を持つ反面、メディアがものすごくうるさい国であることの煩わしさを表面化させてしまった。

 そしてもうひとつの問題は冒頭のジョンのコメントに戻る。昨年10月18日に掲載された当コラムでも主張したが、やはりプレミアリーグの激しさで選手が心身ともにへとへとになってしまうことだ。それも今回のブラジル戦と続くベルギー戦は、これから今シーズンの全ての決着をつけるという、緊迫しまくった3月下旬に行われた。

 一方で、北朝鮮とのアウェー戦が中止になったこともあり、日本代表の遠藤航が今回の代表遠征で少しプレーしただけで帰って来ることにリバプール・ファンが大喜びしている。
 この現象からしても、今後はもう思い切って、3月の親善試合は10キャップ以下の選手しか呼ばない決まりにするなど、クラブと代表で主力となっている選手の消耗を鑑み、日程と招集ルールを真剣に考え直す時期にきているのではないかと思っている。