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 2024/03/29 02:26

久保建英の活躍が光るリアル・ソシエダ、厳しいスケジュールを乗り越え再起を図る


スペイン国王杯での敗北を受けて、一週間後にはパリSGとのCL 16強第2戦も落とし、ヨーロッパ戦線から撤退したソシエダ。久保建英にはさらなる奮起が求められる。

スペイン国王杯での敗北を受けて、一週間後にはパリSGとのCL 16強第2戦も落とし、ヨーロッパ戦線から撤退したソシエダ。久保建英にはさらなる奮起が求められる。


 選手として新たなる高みを目指し、昨夏にリアル・ソシエダへの加入を果たした22歳の久保建英。その足取りを追う月刊新連載コラム「久保建英とラ・レアルの冒険」の第6弾。今回は国王杯準決勝のマジョルカ戦でのPK戦の敗退を振り返りつつ、昨年の緩慢な流れから踏ん張りどころを探る。シーズン残り約3カ月、起死回生をかけた久保を中心とする攻撃部隊の「もう一踏ん張り」が、チームの巻き返しには不可欠だ。



2つの大舞台が生む、緊迫した期待感


「今日はお祭りだ!」


 親しみを込めてメディアパスを手渡してくれるリアル・ソシエダの女性スタッフは、重要な一戦を前にして興奮を隠せず、そう声をかけてきた。


 2月27日はマジョルカとの国王杯準決勝第2レグの日。初戦のアウェイマッチでの引き分けに続き、ラ・レアルにとって今回の一戦がファイナル進出のチャンスかという重要な試合だった。2019-20シーズンにも優勝を飾った(決勝は2021年に実施)ソシエダにとって、国王杯は手の届きやすいターゲット。ラ・リーガでの覇者は、バレンシア以来レアル・マドリー、バルセロナ、アトレティコの独擅場であり、ヨーロッパのカップ戦においても予算面や規模面を勘案すると、手が届かない現実がある。


 リーグ戦では上位に食い込めず、不安定な立ち位置の中で、国王杯での4シーズンぶりの優勝はソシエダにとって意義深かった。勝てばヨーロッパリーグへの出場権を手に入れることができ、決勝進出だけでも来季へのスーペルコパの出場権が得られる。これほどのダブルリワードを前に、チーム一同は燃えていた。アジアカップからカムバック後、連続フル出場中の久保建英にとっては、プロとして初めてのタイトルに手が届くかもしれない絶好のチャンスだ。


 試合数時間前から地元のアレーナ周辺はすでにお祭り状態。バルからは青白いユニフォームを着たファンがあふれ、勇ましいチャントが鳴り響いていた。全員が祭りを心から楽しみ、試合開始を待ち望んでいた。


 チームバスが到着すると、サポーターたちは発煙筒を振りながら熱狂的に出迎えた。クラブへの思いを叫び、感情が最高潮に達していた。本番まで1時間半を切っているが、すでに争いの空気が充満していた。



刹那を刻むようなエキサイティングな試合の流れ


国王杯準決勝の戦いでは、マジョルカのDFに厳しくマークされていた久保だが、その足元にボールが渡ると、神がかり的な一手で場を盛り上げていた。

国王杯準決勝の戦いでは、マジョルカのDFに厳しくマークされていた久保だが、その足元にボールが渡ると、神がかり的な一手で場を盛り上げていた。


 一方、21年ぶり2回目の優勝を目指すマジョルカのサポーターは、400人ほどがサン・セバスティアンに駆けつけていた。試合前、その中の1人に話を聞くと、彼はソシエダの要注意人物として、迷わずかつてのアイドルである久保の名前を挙げた。


「お気に入りの選手だったから、マジョルカを退団した時は残念だったよ。彼のプレーを見るのが本当に楽しみだったんだ。いろいろな形でドリブルを仕掛けてくるから、敵になるととても怖い。ラ・レアルで一番厄介な存在だよ」


 オーバーワークにより、フィジカルコンディションの低下が懸念された久保だが、怪我人が相次いでいる台所事情もあって、イマノル・アルグアシル監督にこのエースを休ませるような余裕はない。絶対に勝たなければいけない一戦で、久保はいつも通り4−3−3の右ウイングとしてスタメンに名を連ねた。


 久保にとって古巣マジョルカとの対戦は今季4度目。過去3度の対戦成績は2勝1分け、うち2試合でゴールに絡んでおり、非常に相性の良い相手と言えた。


 降りしきる雨に濡れたスタンドが青と白に染まり、バスク語で“コミットメントが熱意を高める”と書かれた横断幕が掲げられる。3万5000人を超える観衆をのみ込んだスタジアムのボルテージが最高潮に達する中で、キックオフの笛が吹かれた。


 いつも通りの守備的な5バックで臨んだマジョルカは、ホセ・マヌエル・コペテをメインの監視役に、さらにジャウメ・コスタも補佐役として、徹底的に久保をマークした。


 21分、そのコペテが味方のゴールから30メートル以上も離れた位置にもかかわらず、ドリブルを仕掛けた久保を後ろから荒々しく引っ張って止め、イエローカードを提示される。昨年末のカディス戦でルベン・アルカラスにぶん投げられたシーンを思い出させるような悪質なファウルに、久保は怒りを露わにした。


 ゴール前を固めたマジョルカの牙城を、いかにして崩すか。その突破口を切り開いたのはやはり、相手のラフプレーにも怯むことがなかった久保だった。前日会見でマジョルカのハビエル・アギーレ監督も、「タケはスペインに来てから今が一番いい状態だと思う」とかつての教え子の印象を述べていたが、その言葉通りのパフォーマンスを序盤から披露する。


 足に吸いつくようなドリブルでボールを運び、相手を引きつけたうえでストップ&リリース。久保がボールを受けるたびに、「タケなら何かやってくれそうだ」と、レアレ・アレーナを埋めたソシエダ・サポーターからざわめきが起こった。


 すると44分、この日最大の見せ場が訪れる。久保がボールを足元に収めた時、警戒心のあまり相手が足を出せず、まるで時間が止まったかのように感じる瞬間があるが、この場面がまさにそうだった。


 右サイドでパスを受けた久保が、一呼吸の溜めを作ってから、左足で前線にスルーパスを送る。相手DF2人の間を綺麗に抜けたボールを、マルティン・スビメンディがダイレクトで折り返すと、これがエリア内にいたマジョルカのDFアントニオ・ライージョの手に当たりPKの笛。千載一遇の先制のチャンス到来に、スタンドは歓喜に揺れた。


 しかし、キッカーのブライス・メンデスがまさかのPK失敗──。ソシエダは落胆のため息とともにハーフタイムを迎えた。



辛い現実を受け入れようと頭を抱えて


久保も絡んだ仕掛けからオヤルサバルが同点ゴール。しかし、決定力不足に苦しむソシエダはPK戦の末に国王杯準決勝で敗れ、“2つのご褒美”も逃した

久保も絡んだ仕掛けからオヤルサバルが同点ゴール。しかし、決定力不足に苦しむソシエダはPK戦の末に国王杯準決勝で敗れ、“2つのご褒美”も逃した


 嫌な空気を引きずったまま迎えた後半開始直後の50分、スローインをきっかけに得点を許したソシエダは、1点を追ってここから猛攻を仕掛ける。時間の経過とともに疲労の色が見え始めた久保も、54分にペナルティエリアの外からボレーを放ち、59分には右サイドから左足で弧を描いてゴールに向かう得意のクロスで際どいシーンを作った。


 マジョルカの堅守に阻まれ1点が遠く、徐々に焦りが募る展開となったが、それでも71分、久保が絡んだ攻撃からついに待望の同点弾が生まれる。久保との小さなワンツーで抜け出したB・メンデスが前線へスルーパス。これを、故障明けで63分から投入されていたミケル・オヤルサバルがゴールへ流し込んだ。


 試合はこのまま延長戦へ。93分には右足を蹴られ、ピッチに倒れ込んだ久保は、すでに疲労がピークに達していたはずだが、プレーを続行。そして最後の力を振り絞るかのように、そのわずか2分後、再び右からファーサイドのミケル・メリーノに正確なクロスを届ける。だが、メリーノのヘディングシュートも、こぼれ球を叩いたキーラン・ティアニーのシュートも、惜しくもゴールライン上でクリアされてしまう。


 そして104分、ついにフィジカル的な限界に達した久保は、サポーターの大きな拍手に包まれながらピッチを後にする。試合は延長戦でも決着がつかず、PK戦へ。久保はベンチからその結末を見届けるしかなかった。


 今になって思い返せば、PK戦直前の両陣営の雰囲気には大きな違いがあった。ソシエダのアルグアシル監督が緊張感を途切れさせないよう、円陣を組んでチームを鼓舞したのに対して、マジョルカのアギーレ監督は笑顔で選手たちに声を掛け、何よりもリラックスさせることを最優先していた。この小さな違いが、PK戦の結果に大きな影響を与えたと言えるかもしれない。


 ソシエダは一番手の“PK職人”オヤルサバルのシュートが、相手GKドミニク・グレイフに弾き出されると、その後はマジョルカが全員成功。結局2試合合計1-1、PK戦4-5のスコアでソシエダの敗退が決定した。


 すでに日付も変わり、時刻は深夜0時半。マジョルカの5人目のPKが決まった瞬間、ソシエダのベンチ前にはこの辛い現実を受け入れ、耐えようと頭を抱える久保の姿があった。そして頭を上げると、ロッカールームに引き上げることもせず、敗戦にも健闘を称えてくれるサポーターたちを、ただ静かに見つめていた──。



久保復帰後の公式戦は1勝2分け5敗


CLラウンド16第2レグでは、マジョルカ時代の僚友イ・ガンインと競り合うシーンも。万全なチーム状態でなければ、強豪パリSGの壁を破るのはやはり難しかった

CLラウンド16第2レグでは、マジョルカ時代の僚友イ・ガンインと競り合うシーンも。万全なチーム状態でなければ、強豪パリSGの壁を破るのはやはり難しかった


 プロキャリア初のタイトル獲得はならなかった久保だが、試合後に話したマジョルカの地元紙『ディアリオ・デ・マジョルカ』のミゲル・チャカルテギ記者は、そのパフォーマンスを高く評価していた。


「タケのこの2年間の成長ぶりには目を見張るものがある。今日もレアル・ソシエダのベストプレーヤーの1人だったし、間違いなくこの試合で最も違いを生み出していた。最後は疲れから交代せざるをえなかったが、彼がボールを持つたびに何かが起こっていたよ」


 翌日のスペイン紙『ムンド・デポルティボ』は、「2024年2月27日はイマノル・アルグアシル時代のラ・レアルにとって最も悲しい夜となった」と記したが、最近のソシエダのパフォーマンスを見れば、これも必然の結果だったのかもしれない。


 マジョルカとの国王杯準決勝の2試合、延長戦も含めた計210分間でソシエダは38本のシュートを打ったが、決定的なチャンスはほとんどなく、奪ったゴールはオヤルサバルの1点のみ。もちろんマジョルカの守備が素晴らしかったとも言えるが、この“貧打”で勝ち切るのは難しい。


 頼れるセンターフォワードが不在で、現地では決定力不足が深刻な問題として以前から指摘されているが、昨年末から続くスランプの一番の原因は、やはり試合数増加によるフィジカルコンディションの低下だろう。


 国王杯敗退後の第27節・セビージャ戦を終えた時点で、ラ・リーガのチームで最多の公式戦41試合を戦っているソシエダは、選手層の薄さが影響し、レギュラー陣の出場時間の合計もリーグトップとなっている。久保とアマリ・トラオレ(マリ代表)が1月上旬に代表戦でチームを離脱した後は、1週間で2試合をこなす過密日程に突入したことで怪我人が急増。負傷離脱者はわずか3週間で今季最多の7人に達し、国王杯のマジョルカ戦でも5人が欠場していた。


 こうした状況が2カ月近く続いていることで無理が祟り、主力選手の多くが調子を崩している。アジアカップから復帰後、フル稼働を強いられている久保も、要所で違いを見せつけているとはいえ、勤続疲労の影響は否めない。


 国王杯優勝の夢を断たれたマジョルカ戦から1週間後の3月5日、ソシエダはパリ・サンジェルマンとのCLラウンド16第2レグに1-2で敗れ、欧州最高峰の戦いからも撤退を余儀なくされた(2戦合計1-4)。個の力で見劣りするソシエダが勝機を見出すには、とりもなおさずベストコンディションが絶対条件であったが、過密日程と選手層の薄さがそれを許さなかった。


 これで久保復帰後の公式戦8試合の成績は1勝2分け5敗(マジョルカとの国王杯準決勝第2レグは引き分けとしてカウント)。久保の孤軍奮闘も結果につながっていない。ちなみにホームでは昨年11月26日のセビージャ戦(2-1)を最後に、8試合連続で白星から遠ざかっている。


 シーズンも残り3カ月を切った。2つの大きな目標を短期間で失った今、このネガティブな状況をいかにして打破するか。終盤戦で状況を好転させ、CL出場権を掴み取った昨季のようなラストスパートを再現するには、やはり久保を筆頭とする攻撃陣のもうひと踏ん張りが不可欠だ。