【安田記念】ラストスパートで世界レベルの速さを披露――香港のロマンチックウォリアー、日本での大勝利で3カ国目のGIタイトル・8勝目を飾る
香港代表ロマンチックウォリアーが安田記念で勝利し、その世界クラスの力を見せつける
第74回GI安田記念が6月2日に東京競馬場の1600m芝コースで開催され、ジェームズ・マクドナルド騎手が操る香港の1番人気馬、ロマンチックウォリアー(せん6、トレーナー:シャム厩舎、父:Acclamation)が見事に優勝を果たした。コンディションはやや重めで、勝利タイムは1分32秒3。
この勝利によりロマンチックウォリアーは、2023年の香港カップ(香港)、コックスプレート(オーストラリア)に続き、キャリア20戦で15勝目となり、これでGI勝利は合計8回に。香港馬としては18年ぶりに安田記念を勝ち取る快挙を成し遂げた。
接戦を制して2着には武豊騎手が乗る4番人気ナミュール(牝5、トレーナー:高野厩舎)、僅かな差で3着にはジョアン・モレイラ騎手が騎乗する2番人気ソウルラッシュ(牡6、栗東・池江厩舎)が入った。
「これまで騎乗してきた中で際立った一頭です」
ジェームズ・マクドナルド騎手は、世界的に著名な騎手としてオーストラリアのシドニー地区で7度のリーディングを獲得
「これは香港の最強馬の脚色――」と言い切れるほどの圧巻のパフォーマンスを、昨年オーストラリアで最強を決めるコックスプレートを制した馬が、再び世界中の注目を集める走りを日本の地で展開しました。これは彼にとって3つ目の国でのGIタイトル獲得、そしてGI勝利8回目を数えるもの。アジアから出て、まさに世界レベルでの実力を証明した一戦でした。
「このように優れた馬と共に日本に来れたこと、そして熱狂的な日本のファンの前でロマンチックウォリアーの能力を見せつけることができて非常に嬉しく思います。トレーナーやスタッフをはじめ、関係者全員の素晴らしい仕事のおかげです」
薄いグレーのスーツに白シャツ、ピンクのネクタイでプレス会見に姿を見せたマクドナルド騎手は、ニュージーランド生まれの32歳で、オーストラリアでシドニー地区のリーディングタイトルを7回も獲得するなど、GIレースでの勝利も100回に迫る実力者です。日本のファンなら2015年にジョージライダーステークスでリアルインパクトを勝利に導いたことを覚えているかもしれません。彼は2022年にライアン・ムーアやウィリアム・ビュイックを抑えてロンジンワールドベストジョッキーの栄冠も手にしました。
ロマンチックウォリアーがこれほどまでに特別な存在であることを物語るように、彼の背後には世界を股に掛ける才能があります。彼の圧倒的な強さは、競馬界に精通する日本のファンでも明確に認識されていることでしょう。
ファイナルハロンで爆発的なスピード、自らリードを確立
最後の直線で見せた驚異的な加速、競争相手を圧倒
レースでは一瞬でリードを取る見事なスタートを見せた後、戦術的に5番手でレースを進め、絶妙なタイミングでのペース配分を実現していた。
「プラン通りのレース展開でした。スタートから良い位置をキープすることができ、レース中は馬も非常に集中していました。最初から馬はやる気満々で、レース中も理想的な走りを見せてくれました」
レースの最終コーナーから直線にかけては、先週の日本ダービーの優勝騎手、横山典弘騎手が操るステラヴェローチェにプレッシャーを受けた。しかし、そのプレッシャーをはねのけてからの最後の1ハロンは見どころ満載だった。
「外側からの圧力を感じながらも、終盤にかけての追い出しを計画通りに行いました。ロマンチックウォリアーの強力な末脚は他の追随を許さず、最後は全力で走り抜けてくれました」
確かに、最後の直線で前を走るウインカーネリアンとフィアスプライドに追いつき、残り200mで繰り出された猛烈なスプリントは圧巻。急加速でリードを奪取し、そのまま後続馬との距離を一気に広げていった。大外からメンバー最速タイムで追い上げるナミュールも、ロマンチックウォリアーの速さには及ばず、半馬身差をつけるのがやっと。これは間違いなく圧勝だった。
マクドナルド騎手、勝利の喜びに満ち溢れるウイニングラン
勝利の瞬間、興奮を隠せないウイニングランがファンを魅了
「このレースで、彼が真のチャンピオンであることを証明しました。どんな厳しい状況でも冷静に対処し、オーストラリアのコックスプレートや香港カップといった強力な競争を勝ち抜いてきました。本来のベスト距離よりも短い1600mでも、どんな状況下でも勝ちを掴む馬です。真の勝者であり、抜群の能力を持つ馬だと確信しています」
また、マクドナルド騎手にとっても、この勝利は日本での初めての勝利という記念すべきものでした。ウイニングランでは右手、左手を空高く振り上げたり、ファンに向けて耳を澄ませるジェスチャーをして、歓声を喚起した。その場にいたファンを喜ばせただけでなく、彼の人柄に魅了された新たなファンも多く生まれたでしょう。
「この栄誉あるレースでの勝利は、自分にとって極めて重要な瞬間です。これが最後ではなく、これからも何度も日本で勝利を目指したいと強く願っています」
日本のトップマイラーを相手にした戦いで決定的な勝利を収めたロマンチックウォリアー、そしてマクドナルド騎手の卓越した技術とファンに対する素晴らしいサービス。安田記念で彼らのファンが日本中に急増したことは間違いないでしょう。
宝塚記念の出走を見合わせ、香港カップへの3連覇に照準
次なる目標は宝塚記念ではなく、休養を経て挑む香港カップ。ロマンチックウォリアーは再び日本馬にとっての難敵になるだろう
今年上半期のメジャーレースである宝塚記念への期待が高まる中、ピーター・ラウ氏及びチャプ・シン・シャム調教師は、ロマンチックウォリアーにとっての次のビッグステージを、3連覇がかかる年末の香港カップに設定していることを明かした。
「レースの翌日には状況を見て決めますが、安田記念での激戦の後は疲労が溜まっていると感じています。今シーズンは既に5回も競走しており、ここは一息入れて次のシーズンに向けて香港での出走を計画する段階だと思います」(ラウ氏)
「香港での競馬シーズンが9月に開幕するのですが、9月や10月に出走する予定は現時点ではありません。直接香港カップを目指すか、もしくはその前に1レース出走させる可能性もあります」(シャム調教師)
ロマンチックウォリアーが再び日本の競走馬と対戦する際には、自国で開催される最大級のレースである香港カップでの強敵として立ちはだかることになる。この巨大な挑戦を日本の競走馬が乗り越えられるか注目が集まる。香港カップでの壮絶な戦いが、今から楽しみでならない。
オーナーのラウ氏は、日本の100円ショップをモデルに「ジャパンホームセンター」を創業するなど、日本と深い繋がりがある。馬主としての歴史はまだ浅く、保有してきた馬はロマンチックウォリアーを含めわずか6頭に過ぎないが、「日本で競走させる」という長年の夢を果たして栄誉を勝ち取った。
一方、シャム調教師は2000年に安田記念を勝ったフェアリーキングプローンの調教助手として日本に遊学し、「貴重な経験をさせてもらいました」と当時を振り返る。名伯楽であるアイヴァン・アラン元調教師の下で修業を積んだ経験は、今シーズンの戦略にも影響を与えている。