桜花賞展望:阪神JF出走馬に注目
春の陽気の下、今年も桜花賞が阪神競馬場で華麗に開催される。前年の阪神JFを勝利したリバティアイランドが桜花賞も制し三冠へと駆け上がったのは記憶に新しい。今週末、芝1600mのコースでどの馬が花開くのか、過去10年のデータをもとにレースの傾向と注目馬を解析しよう。分析ツールにはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVが活用された。
前走1600mが多数、休養明け好成績を収める傾向に
■図表1【桜花賞の前走距離別成績(過去10年)】
図表1は前走距離別の成績を示している。出走頭数が多い1600m組から9勝が挙げられており、上位入賞馬の大部分を占めている。1400mからの勝利例は17年にレーヌミノルがあるが、その他は連対や複勝率が著しく低く、1400m組の好走馬3頭は前走フィリーズRで全て2着だった。1800m以上では好成績を残せていないため、1600mが一つの基準として重視される。
間隔は中4~8週よりも、中9~24週組の勝率・連対率・複勝率が優れており、1月もしくはそれ以前の前哨戦を経て良い状態で望む馬が、結果を残していることが分かる。
キャリア3戦、特に前走阪神で走る馬に照準
■図表2【桜花賞のキャリア別成績(過去10年)】
図表2は、キャリア別の成績を表している。キャリアが3戦の馬たちが、昨年のリバティアイランド含む4勝を挙げ、連対率30.3%・複勝率36.4%と最も高い数字を記録している。その中でも前走阪神で走った馬は特に目覚ましい成績を収めており、連対率50.0%、複勝率55.6%という結果に結びついている。昨年の好走馬コナコースト(前走チューリップ賞2着)も例に漏れず、このパターンは目が離せない。
他にもキャリア4・5戦の馬からはそれぞれ2勝ずつ出ており、3着以内に入る馬は大体が2~6戦の範囲に集中している。
阪神JFから直行した馬、驚異の連対率100%
■図表3【桜花賞の前走成績別(過去10年)】
図表3には前走の成績による影響を示すデータが記載されている。前走1着馬は5勝を挙げるなど活躍しているが、注目点として前走2着馬の複勝率21.4%や前走3着馬の27.3%が1着馬を上回る傾向にある。
特に、阪神JFを制した後に桜花賞に直行するパターンは、21年ソダシや昨年リバティアイランドが勝利を収め、連対率100%という驚くべき信頼度を誇っている。他方、チューリップ賞組はG3時代は高い複勝率を誇っていたが、G2昇格後は振るわず、フィリーズR勝ち馬も過去11頭が4着以下で幕を閉じており、この傾向からも前走の成績や経験は桜花賞での勝利に大いに関係しているようだ。
騎手継続騎乗の利点、G1経験馬に優位性あり
■図表4【桜花賞の騎手継続騎乗と乗り替わりの成績比較(過去10年)】
図表4では騎手の継続騎乗と乗り替わりの成績を比較している。継続騎乗馬は、20年のデアリングタクトを含む7勝を収めており、乗り替わり馬より高い勝率・連対率・複勝率を示している。特に前走G1組の馬は、昨年のリバティアイランドを含む3勝を挙げており、その数値は62.5%と顕著で、これら馬は前走G1で3着内だった。一方、前走G3での勝ち馬は主にチューリップ賞組であり、オープン特別組からは20年のデアリングタクト(前走エルフィンS)が唯一の勝者である。
注目馬アスコリピチェーノ、阪神JFの勝利から直接挑む
■図表5【今年の桜花賞注目馬】
図表5では、桜花賞の注目馬が列挙されている。
注目は、二つ返事でアスコリピチェーノへの信頼を置きたい。阪神JFの勝ちタイムは過去10年でトップであり、品質の高いレースだった。図表3に示されるように、阪神JFの勝者から直接の出走は連対率100%という驚異的な統計を誇る。キャリア3戦で、前走阪神で走るメリットがあり、かつ北村宏司騎手が継続して騎乗予定。目立った弱点は見当たらず、勝利に最も近い存在といえるだろう。
一方で、ステレンボッシュはアスコリピチェーノをクビ差まで追い詰めた競走馬であるが、乗り替わりとなるルメール騎手のチェンジが気がかりな点だ。能力的には阪神JFで上位だった2頭による決着も十分可能で、再度のワンツーフィニッシュが見込まれる。
穴馬として注目したいのは、前走チューリップ賞で戦ったセキトバイーストとハワイアンティアレの2頭だ。セキトバイーストは前半1000mが57秒7というハイペースを押えて2位に入った。逃げ馬に有利なコンディションが揃えば、勝機はある。ハワイアンティアレもキャリア3戦で、図表2で示された好走傾向に合致しており、注目に値する馬だ。