大谷翔平対今永昇太の初顔合わせ、勝負を決した今永の"質"とは?
ドジャースとカブスの試合で、初回に大谷翔平を三振に取る今永昇太
「こんなに寒い4月初旬にシカゴでプレイするなんて」
ダイナミックなシリーズのフィナーレを前に、4月7日にドジャースのフレディ・フリーマンがロッカールームで冗談めかした口調でつぶやいた。開始した最初の二試合は昼間とはいえ凍るような寒さで、シリーズ最後の試合では雨天も加わっていた。
フリーマンの肌寒い予感は当たり、7日のゲーム開始直前に止んでいた雨が3回目あたりから降り始め、アウトフィールドの一部に水溜まりができるほど。そして4回、カブスの攻撃中に雨脚が激しくなり、試合は中断。その後降雨による中断は2時間51分に及び、プレイが再開されたのは5時35分。この時点で大半の観客は帰宅していた。
試合は、すでに点差が開いていたこともあり、その後はただ終了までを淡々と進行したが、ストップ前に行われた大谷翔平と今永昇太の投げ合いは見応えたっぷりだった。
一回の最初の対決では、初球は大きく外れた内角上の球だったものの、次の球で内角上に強いストレートを放り、大谷はファウルに。この時の打球は、今永が力で押し込んでいるのが明確だった。
カウント1−1からの次の球を今永は慎重に選ぶ。
この時の判断基準について、かつてトレバー・バウアーがインタビューで語っていたエピソードが思い浮かぶ。
バウアーはこの様なことを言っていた。
「アメリカのプレイ経験からすると、ストレートを真ん中でファウルさせれば、バッターはタイミングを外していると判断し、少し高めや内角に投げればアウトが取れる」
では日本のバッターはどうなのか?
「日本のバッターは初球で真ん中の球をファウルにすると、次はストレートを狙う傾向があると感じた。僕は初めての2回の登板が終わったあと、セ・リーグ、パ・リーグともに試合動画を20時間見て、そのバッターの反応型に応じたストラテジを適応させる日本流のスタイルを編み出したんだ。バッターの特色を理解し、それに合わせた選球をキャッチャーと相談して投じる」
その3球目で大谷は今永の高めのストレートにタイミングを外していたが、どう出るか?
今永が選んだのは連続してスライダーだった。
彼は「4シームの球を待ってないので、もう一球投げるべきだろうか」と考えてから、「しかし直感でスライダーが適切だと感じたんです。ちょっとボールになりましたけどね」と笑って話した。
メジャーリーグの舞台でも、今永は大谷が日本人であることを意識していた。「どんなピッチを投げても、大谷選手は常にストロングなスイングができるという印象を持ちました」と彼は述べ、大谷のバッティングから何かを読み取っていたかもしれない。
カウント3−1になった後、今永はチェンジアップを間に挟みつつストレートを続投。フルカウントにしてから、最終的には内角高めの4シームで見事な空振り三振を記録した。熱い主導権争いだった。
なぜ高いストレートで攻め続けたのか。
「追い風だったから、右翼方向に大きい当たりが出ても援護がある。風の助けを借りれば、ライト方向にヒットが飛んでもリスクは低い。直球は引っ張られても問題ない」と考え、最後は高めに投じたそうだ。
一方、大谷も「今回は打者目線から見ると風の影響を大いに受けていました」とシリーズ全体を振り返る中で、その計画的な投球配分だったと話した。
今永昇太の4シームが示す回転効率の重要性
大谷翔平を三振させる決定球となった今永昇太の4シーム
一部では今永昇太の4シームの高い回転数が球にホップする効果を与えているという見方があるが、これは正確な理解とは言えない。
実際、今永の4シームの平均回転数は、今シーズンの2試合後で分あたり2404回と、リーグ平均の2282回転を大きく上回る。しかし、本当に注目すべきは回転「効率」だ。これは球に伝わる回転がどれだけ効率的かを測る指標で、より高い効率は直進性のあるバックスピンを意味する。進行方向と回転軸が直角に近いほど効率は高く、100%に近づくほどホップ効果が期待できる。逆に0%はジャイロボールを意味し、それは基本的に変化のない球だ。
だから、回転数だけを見ても変化量への貢献度は判断できない。さらにミソは、バックスピンの効率とボールの継ぎ目の影響の相乗効果にある。今永の4シームにおける平均変化量は47.5cmで、MLB平均の約41cmよりも大きく、差の理由は単に回転数だけでないことを示している。
そして、今永の4シームの回転効率は、メジャー初登板日の4月1日には97.9%という驚異的な数値を記録。ただ本人はさらに完璧を目指しており、「100%を目指しています」と満足できない様子を見せていた。実は7日の試合での回転効率はなんと驚きの99%だったのだ。これが大谷のバットをも巧みにかわしていく原因である。
2度目の対戦では、今永は consistently high 4-seamers、特に内角の高めで大谷を圧迫し、その結果三邪飛に打ち取るシーンもあった。大谷はクリーンヒットだと思ったかもしれないが、おそらく球は想像以上に高く舞ったのだろう。
「どれだけ品質の高いストレートを投げるか。」今永自身「これが打者を制するかどうかの決め手」と語っている。
「自分にとってベストな選択肢を見つけ出し、後は結果を受け入れるだけです。今回は自分らしいストレートが投げられたと思います」と彼は試合を振り返った。この初戦での勝利は、彼に大きな自信を与えたはずだ。
初めての対峙であった今永と大谷の勝負は、今永に軍配が上がった
しかしながら、単純に回転数や効率が高いから良いピッチとは限らない。例えば回転数が1800回転で効率が60%の場合、そのボールは通常より沈む傾向にあり、これはゴロの多発を引き起こす。ダラス・カイケルのようなピッチャーは、その種の球質を持っていた。
そのため、投球データが平均から外れるほど独自のダイナミクスを創出し、打者にとって読みづらい軌道になる。今永の4シームでは空振りを取ることができるだけでなく、安打やホームランリスクを含むフライも増えるが、その微妙な差が結果を左右するのだ。
結論として、今永は十分な準備をして大谷との勝負に臨み、大谷も全力のスイングで応えた。その一球には、観る者全ての注目を集めたのだった。