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 2024/03/27 13:53

巨人の強力な投打陣、抜本的に改善されたリリーフに明るい光は?


90周年を祝う巨人、戸郷翔征を筆頭にした投打ラインナップの充実

90周年を祝う巨人、戸郷翔征を筆頭にした投打ラインナップの充実


 開幕が迫る中、1934年の創設から数えて記念すべき90周年を迎えた今シーズンの日本プロ野球に注目が集まる。各チームが開幕戦に向けてラインナップを整える一方で、開幕一軍を逃した選手や若手の成長もチームパフォーマンスには不可欠な要素となる。このコラムでは、昨季一軍選手のポジションごとの得失点の貢献度を基に、新シーズンにおける見通しのポイントを分析していきたい。野手ごとの貢献を示すwRAA(Weighted Runs Above Average)や守備のUZR(Ultimate Zone Rating)、そして投手はRSAA(Runs Saved Above Average)といった指標を用いる。これらは、平均的なリーグプレーヤーと比較してどの程度上回っているかを示すもので、tRA(True Run Average)を使用したRSAAは、守備の影響を排除して算出された失点率に基づく。


 今回取り上げている指標、wRAAとRSAAはスポーツナビでも週間MVPを選出する際に活用されている。この指標の詳細に関しては、指定されたリンクを参照されたい。



先発陣に注目、豪腕揃いの投手ラインナップ


すでに陣営には注目の投手が揃っている巨人:2023年の得点貢献度

すでに陣営には注目の投手が揃っている巨人:2023年の得点貢献度


 連続Bクラスという厳しい状況を迎えている巨人だが、昨季の先発はリーグ平均を超える貢献度を見せた。WBCの優勝メンバーに名を連ねた戸郷翔征はシーズンでも安定した実績でリーグ2位タイの12勝を記録。山﨑伊織も規定投球回数を超える活躍で2桁勝利をあげた。昨シーズンチーム最高のRSAAを叩き出したグリフィンは、8月以降5試合で圧倒的な防御率0.56を記録するなど安定したパフォーマンスを見せたが、オープン戦では課題が見受けられる場面も。


 3年目のシーズンに入る赤星優志も、8月以降6試合で5勝し、防御率1.36と驚異の成績を残している。今シーズンは開幕から定位置を確保したい。さらにオフのトレードで獲得した高橋礼も試合でのアピールが光り、開幕のローテーション入りの期待がかかっている。また、昨季の不振からの巻き返しを図る菅野智之は、チーム最年長投手としての貫禄を見せたい。西舘勇陽や二軍で最多勝を記録した松井颯のような若手がリリーフで起用されており、投手陣は昨シーズンを超える可能性を含んでスタートを切る。



解決が望まれるリリーフ陣、充実が図られる


ドラフト元阪神の馬場皐輔獲得などで入れ替わったリリーフ陣。昨シーズンと比較し、明らかに陣容に厚みが増している

ドラフト元阪神の馬場皐輔獲得などで入れ替わったリリーフ陣。昨シーズンと比較し、明らかに陣容に厚みが増している


 リリーフ陣は昨シーズン、救援陣でリーグワーストの防御率を記録し、改善が求められる部分となっていた。この課題に対応し、オフには大幅なメンバー改善を実施。泉圭輔、近藤大亮をトレードで迎え、現役ドラフトでは馬場皐輔を選択。自由契約のケラーも阪神から加入し、経験豊かなリリーフ陣を築いた。そして、社会人出身新人の又木鉄平が存在感を放っているほか、西舘や松井、京本眞といった先発争いから漏れた選手たちもリリーフへと回り、ブルペンには新しい才能が充填されている。


 既存戦力に目を向けると、昨季50試合に登板した菊地大稀がリリーフでチームトップのRSAAをマーク。故障から復帰した中川皓太やルーキーイヤーの船迫大雅が活躍したほか、シーズン途中に加入したバルドナードも防御率1点台を記録した。一方、不安要素となっているのが守護神の大勢だ。昨季は故障の影響もあって27試合の登板で防御率4.50と振るわなかったが、今春のキャンプでも右ふくらはぎ痛で離脱するなど、コンディションに不安を抱えている。現状では勝ちパターンは不透明な状況となっているものの、好調な投手は多いため、必ずしも役割を固定する必要はないかもしれない。


ベストナイン・大城卓三を中心とした鉄壁キャッチャー陣


巨人野手:2023年ポジション別得点貢献度

巨人野手:2023年ポジション別得点貢献度


 昨季は正捕手の大城卓が134試合に出場して打率.281、16本塁打といずれもキャリアハイの成績をマーク。攻撃面で他球団に大きな差をつけたことに加え、守備でも盗塁阻止率.373を記録したこともあり、捕手はリーグトップの得点貢献度をマークした。また、今回使用した評価の項目には含んでいないものの、大城卓はストライクゾーンの際どい投球に対するフレーミングのスキルでも優れているのが特徴だ。阿部慎之助監督の現役時代ほどの存在感はないかもしれないが、現代のNPBでは攻守両面でトップクラスの活躍を見せているキャッチャーである。


 2番手以降も岸田行倫が捕手としては優れた打撃成績を残しており、若手の山瀬慎之助も二軍で好成績を残している。キャッチャー陣はバックアップの層も厚いのが特徴で、もしも大城卓にアクシデントがあったとしても、大きな痛手となる可能性は低い状況だ。



一時代を築いた坂本勇人が本格コンバート


長らくショートを務めた坂本が、今季から本格的に三塁へ転向。内野の顔ぶれが変わり、ポジションごとの数値にも変化が起こりそうだ

長らくショートを務めた坂本が、今季から本格的に三塁へ転向。内野の顔ぶれが変わり、ポジションごとの数値にも変化が起こりそうだ


 昨季は岡本和真がリーグトップのOPS.958をマークし、坂本が同3位のOPS.884を記録。両者が主に守った三塁と遊撃はそれぞれリーグトップの得点貢献度を記録するなど、内野4ポジションすべてでリーグ平均を上回り、合計値でも阪神に次ぐ数値を残していた。そうした中、今季は内野のレギュラーが本格的にコンバートされ、ポジションごとの収支は変わるだろう。オフに一塁手の中田翔が退団したことや、昨季途中にルーキーの門脇誠が頭角を現したことで、一塁は岡本和、二塁は吉川尚輝、三塁は坂本、ショートは門脇がレギュラーとなる見込みだ。門脇は昨季オールスター以降、打率.320、OPS.778とショートとしては優秀な打力を見せ、守備でもリーグ上位の得点貢献度を記録した。レギュラー陣が離脱することなくシーズンを通して出場できれば、今季も12球団トップクラスの内野陣となるだろう。


 懸念材料を挙げるとすれば、内野の選手層が充実しているとはいえないため、レギュラーとバックアップの選手との間に大きな実力差がある点だろうか。そのリスクに対しては、オフに新外国人のオドーア、ドラフトで社会人出身の泉口友汰を補強して、選手層の強化を図っている。



本命のレギュラーは不在の外野手。センターは若手による激しい競争


 昨季は前年にチームトップクラスの活躍を見せた丸佳浩が不調に陥ったこともあり、規定打席に到達した外野手はゼロ。不動のレギュラー選手はいなかったが、選手層の厚さを生かして両翼ではリーグ平均以上の得点貢献度を記録した。21歳の秋広優人が打率.273、10本塁打とブレークを果たしたほか、ベテランの長野久義や梶谷隆幸が一定の活躍を見せた。オフにはメジャーで通算178本塁打の実績を持つオドーアが加入し、ライトのレギュラーとして期待がかかる。ただ、ライトは丸が不調だったとはいえ、攻守で優れた成績を残していたポジションだ。丸を含めた他の外野手が活躍するようであれば、オドーアは本職のセカンドで起用した方がチームにとって有益となる可能性もある。オドーアが内外野で起用できる状況を踏まえると、今季も外野手は昨年同様に流動的な起用となるだろう。特にセンターは、昨季まずまずの活躍を見せたブリンソンが退団し、激しいポジション争いが繰り広げられている。


  • オドーアは掲載後の26日に退団が発表された。


 オープン戦では、即戦力ルーキーの佐々木俊輔や、近年は不振に苦しんだ松原聖弥が好成績を残している。両翼のポジションは充実しているため、センターは若手選手を我慢して起用しやすい環境となっている。



就任1年目の阿部監督、戦力は整いつつある


 球団創設90周年を迎える巨人。2年連続Bクラスと低迷しているものの、投打にリーグトップクラスの選手が複数在籍し、飛躍が期待される若手も多い。このオフには最大の弱点だったリリーフ陣に大幅な補強を加え、今季は戦力が整いつつある。就任1年目の阿部監督は、投手陣に与四球の削減を求めてストライクゾーンで勝負する方針や、野手陣には自己犠牲のチームバッティングを重視するなど、チームの改革を推し進めている。昨季のセ・リーグでは、阪神が就任1年目の岡田彰布監督のもとリーグ優勝を成し遂げた。2度目の就任だった岡田監督と違い、阿部監督に関しては文字通りの新指揮官となるが、充実した戦力を巧みに操って4年ぶりのリーグ制覇に導けるか。