実戦形式の打撃練習「ライブBP」で一発ホームランが飛び出しました!大谷翔平の早期復帰を支援する最新の打撃マシン「ビジョン」とは?
実戦形式の打撃練習「ライブBP」に初めて参加し、笑顔を見せる大谷翔平。
フリーマンの長男も大谷のことが大好きです。
2月17日の練習前、若干恥ずかしそうに大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)と一緒に写真に収まったのは、フレディ・フリーマン(ロサンゼルス・ドジャース)の長男、チャーリー君でした。彼が父の元に戻ると、大谷の方をじっと見つめました。
「彼、本当に喜んでるんだよ」
その日の練習後、一連の出来事を明かしたフリーマンは、当時の写真を披露しました。「まぁ、彼が7歳だから、恥ずかしがるのは仕方ないよね」
その朝、チャーリー君は大谷がクラブハウスに到着すると、ジョー・ケリー(ロサンゼルス・ドジャース)の長男、ノックス君を連れて、ロッカーまでやってきました。
大谷とチャーリー君は、2022年のロサンゼルスでのオールスターゲームで初めて顔を合わせました。フリーマンはキャンプの初日、「翔平にさっき会ったら、『チャーリーはどこ?』って聞かれたんだよ。2年前のことなのに、ちゃんと名前を覚えてくれてるなんて、本当に嬉しかったよ」と笑みを浮かべました。その後、今度はチャーリー君がノックス君を紹介することになりました。
ノックス君にサインをもらうよう促したチャーリー君でしたが、大谷が「チャーリー、元気かい?」と声をかけると、彼はそっけなく背を向けて歩き去りました。
ただし、チャーリー君は大谷のことがやっぱり大好きなようです。フリーマンは、「チャーリーは土曜日にも来るんだ。ずっと追いかけるから、翔平は疲れちゃうかもしれない」と話していましたが、その土曜日、大谷が屋外でトレーニングを始めると、チャーリー君はついて回ったのです。
大谷がメディシンボールを真上に投げるトレーニングをしているときも、近くにいました。ある時、そのボールがチャーリー君たちの方向へ飛んで行きました。大谷は「危ない」と言いつつも、慌ててボールを取りに行きましたが、そのボールがワンバウンドして大谷の顔面を直撃しました。しかし、大谷は「ハハハハハハハハ」と笑いました。
大谷の調整具合について、「みんな驚いている」という声が広がっています
大谷と子供たちとの交流
キャンプが始まってから2週間が経ちました。大谷の調整は順調です。キャンプ施設であるアリゾナ州グレンデールのキャメルバックランチに到着した最初は、軽いティーバッティング程度でしたが、キャンプが進むにつれてほぼ室内ケージでフルスイングするようになりました。12日には161日ぶりに屋外での打撃練習を行い、19日にはライブBPに参加していきなり本塁打を放ちました(映像参照)。
その打球は角度がなく、フェンスに直撃するかどうか微妙なものでした。フルスイングとは言いがたいもので、タイミングもやや外れていました。通常ならシーズン中や通常のキャンプであれば、それでもおかしくないですが、今はリハビリ中。しかも、ライブBP初日にして、あのような打球を打てることには驚きです。
デイブ・ロバーツ監督は、「予想よりも早く調子が上がっている。みんな驚いている。翔平以外は」と述べました。
当初は開幕までのプレッシャーをかけないように気を使っていましたが、もはやその心配は不要です。監督は、現在の流れが非常に良いことから、開幕で大谷が打席に立つ可能性が高いと示唆しています。
もちろん、昨年の9月に右ひじの手術を行ったことで、通常よりも調整が遅れています。契約した12月には、まだ素振りしかできませんでした。通常であれば、もう打撃練習を始めている時期ですし、1月には投手の球を打つライブBPの練習を始めているはずですが、それは2月19日までずれ込みました。また、腕を使ったウエイトトレーニングも制限されていました。そのため、開幕までに間に合わせるためには、何らかの過程を省略する必要があります。
そもそも、大谷の打撃の基盤である「構え」「見極め」がしっかりするには、ある程度の時間と実戦経験が必要です。失われた時間をどう補うかが問題ですが、21日の練習後、大谷が次のように述べました。
「今、ビジョンで5打席ほど打ってきました」
大谷が言及した「ビジョン」とは、トラジェクトアーク(映像参照)のことです。カナダのベンチャー企業である「トラジェクトスポーツ」が開発したこの打撃マシンは、スクリーンに実際の投手の映像を映し出し、STATCAST(メジャーリーグ独自のデータ解析ツール)で得られる投球軌道のデータや球速、回転数などを入力することで、その投手が投げる球を完全に再現できます。
最も特筆すべき点は、ジャイロ成分を再現できることです。これまでの打撃マシンでは不可能でしたが、大谷翔平や千賀滉大が投げるジャイロスプリットさえも忠実に再現できるようになりました。現在、約20球団のメジャーリーグチームがこのマシンを導入しています。
大谷はエンゼルス時代からこのマシンを使用しており、今回、ドジャースのキャンプ地にも同様のマシンがあることを公に認めました。
ハーパーのメジャー復帰を支援
トラジェクトアークの実際の投手の映像を映し出します。リリースポイントも投手に合わせて変化します。
その最新の打撃マシンがどのように役立つか、具体的な例を挙げると、以下のようになります。
ブライス・ハーパー(フィリーズ)は、2022年11月23日に大谷と同様のトミー・ジョン手術を受け、わずか160日後の23年5月2日にメジャー復帰を果たしました。野手でありながら、これは復帰例としては最短の記録です。
ハーパーはこの過程で、マイナーの投手に投げさせるなどライブBPを重ねましたが、まだスイングができない段階では、トラジェクトアークで球の軌道に慣れ、スイング解禁後はこのマシンでバッティングを行いました。通常、マイナーリーグで実戦経験を積むことが想定されますが、ハーパーはこのプロセスをすっ飛ばしました。
大谷には今後、オープン戦で打席を積む機会がありますが、スイングが制限されている間は、彼もトラジェクトアークでトラッキングを続けていたようです。彼がどれだけ遅れを取り戻せるかは結果次第ですが、開幕までに50打席は経験したいという話題から、「ビジョンも、僕的には(50打席に)含まれる」と述べました。言い換えれば、トラジェクトアークはその程度に活用されるということです。
結果は先のことですが、今年からトラジェクトアークは試合中にも利用可能になりました。打席の合間に時間がある大谷は、そのルール変更をどう活かすかが注目されます。
なお、オープン戦への出場は来週前半が有力視されています。開幕まで約3週間ですが、大谷はライブBPやトラジェクトアークでの打席数も開幕前の必要な打席数に含まれると考えており、「トータルで50打席に到達するのは、すぐに達成できるんじゃないかな」と楽観的です。彼の視界には完全に開幕戦が入っています。