天皇賞(春)の熱戦を展望:究極の長距離レース
この週末、京都競馬場の芝3200mコースで天皇賞(春)が繰り広げられる。近年、大阪杯がグレード1に昇格し、海外への遠征が増えたこともあり、このレースが長距離レースの頂点を決める場として一層その色彩を強めている。今年も豊富な長距離実績を有する馬たちが名を連ね、注目の一戦となるだろう。データ分析ツールのJRA-VAN Data Lab.とTARGET frontier JVを駆使し、今年の勝者予測に迫りたい。
人気馬に注目
■表1 【人気別のパフォーマンス】
過去10年のデータで見ると、1、2、4番人気馬がそれぞれ複勝確率60.0%を超えており、特に2番人気は5勝を挙げている。過去10年間で勝った馬はすべて4番人気以内である。3連単の配当金額は、2014~2016年は21万円から24万円の間だが、2017年以降は7万円未満へと減少傾向にある。この7年の間において、3着以内に入った21頭中19頭が6番人気以内であった。
内枠が有利
■表2 【枠番別のパフォーマンス(阪神開催を除外)】
京都競馬場で開催された過去10年の8回分のデータを見ると、1枠が勝率21.4%を誇り、4枠が複勝率37.5%と優秀な成績を残している。複勝率で見ると2~4枠が100%以上の回収率を達成し、1枠も85%と高成績だ。また、6枠も連対率18.8%と堅実だが、全体を通じて内枠を引き当てた馬の方が有利な傾向にある。
6歳以下が焦点
■表3 【年齢別・性別別のパフォーマンス】
年齢別で見ると、5歳馬が5勝、4歳馬が4勝を挙げ、それぞれ勝率1割を超えており、6歳馬も勝利には至っていないものの複勝率17.5%と5歳馬(19.1%)に肉薄している。複勝回収率は4、5歳よりもはるかに優れている。そのため、6歳以下の若い馬が注目される。7歳以上の馬は苦戦が予想される。牝馬については、ジャパンカップで複勝3回の成績を持つカレンブーケドールが3着に入ったことがあり苦戦している様子だ。
前走の成績が鍵
■表4 【前走の結果別パフォーマンス】
3着以内に入った30頭のうち、昨年3着のシルヴァーソニック(前走海外1着)を除く29頭は、前走でJRAの重賞レースに出走していた。特に阪神大賞典と日経賞からの出走馬が多数を占めているが、出走数が多いこともあって好走確率はそれほど高くない。ダイヤモンドS出身馬の複勝率は11.1%となっており、上記3レース以外の馬を狙うことが好走確率向上の鍵となりそうだ。
一方、前走で1番人気だった馬や、前走で1着だった馬の複勝率は40%以上と、成績が良い。レースを組み合わせてみると、前走で1番人気だった馬は阪神大賞典組【1.1.3.4】で複勝率55.6%、日経賞組【1.1.2.5】で44.4%、ダイヤモンドS組【0.1.0.4】で20.0%だ。前走で1着だった馬は阪神大賞典組【3.2.2.2】で複勝率77.8%、日経賞組【1.1.1.7】で30.0%、ダイヤモンドS組【0.1.1.5】で28.6%となっており、特に阪神大賞典の勝ち馬には目が離せない。
京都での目立つ成績は父サンデーサイレンス系統馬に集中
■表5 【パフォーマンスにおける種牡馬別成績(3着以内の父)】
種牡馬別で見るとサンデーサイレンス系のディープインパクトをはじめとする系統が、優秀な成績を残す馬の大部分を形成している。サンデーサイレンス系の馬は数が多いため、系統全体としての複勝率は24.6%となっているが、前走で重賞(国内外問わず)を制した馬に限定すると複勝率は56.5%と高まる。
サンデーサイレンス系統でない馬で好成績を収めたのは、2022年の優勝馬タイトルホルダーと同3着馬テーオーロイヤルだけだった。昨年は阪神開催となり、京都で行われた過去10年間の8回はすべて父サンデーサイレンス系統の馬が好成績を収めている。ちなみにタイトルホルダーとテーオーロイヤルの父方は共にキングカメハメハであった。
【考察】
判断は難しいがチャックネイトとテーオーロイヤルへの期待
先に触れた通り、過去10年での優勝馬はすべて4番人気以内で、過去7年間の注目馬21頭のうち19頭が6番人気以内から選出されている。ただし、上位人気が予想されるドゥレッツァ、テーオーロイヤル、タスティエーラ、ブローザホーンは、サンデーサイレンス系とは異なる血統背景を持つ(表5参照)。サンデーサイレンス系のサリエラは牝馬であり、前走のダイヤモンドSでの2着(該当レース2着以下は【0.0.0.11】)という成績も考慮に入れたい点だ。他の出走馬にもそれぞれの利点と欠点があり、少々のデメリットは見過ごして、強い点を持つ馬を選択したい。
サンデーサイレンス系からは、前走でアメリカジャパンカップチャレンジ(AJCC)を制覇し重賞初勝利を飾ったチャックネイト(父ハーツクライ)が注目される。AJCC出身馬は【1.0.0.1】の複勝率を誇り、2019年にはフィエールマンがここで優勝している。表4で言及されているように、阪神大賞典などの主要前哨戦よりも、その他の重賞出走馬の方が良い成績を残す傾向にある。
3000m以上のG1競走は未経験だが、今年のメンバーからすると、チャックネイトの大躍進も十分に期待できるだろう。
非サンデーサイレンス系では前年3着のテーオーロイヤルを筆頭に挙げたい。前走阪神大賞典からの勝馬は【3.2.2.2】で複勝率77.8%という一目置かれる成績を持つ(表4を参照)。次点としては金鯱賞で1番人気となり2着を果たした、父の父がキングカメハメハである4歳馬ドゥレッツァにも注目が集まる。この難解なレース展望では、最終的な馬券戦略には枠順(表2)も重要な判断材料となる事だろう。