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 2024/04/18 23:30

【皐月賞】「藤岡康太の支えに感謝」ジャスティンミラノが献上する感動の初冠


皐月賞、第一戦のクラシックレースをジャスティンミラノが制覇、戸崎圭太が見事な騎乗

皐月賞、第一戦のクラシックレースをジャスティンミラノが制覇、戸崎圭太が見事な騎乗


 3歳の牡馬によるクラシックレースの幕開けとなる第84回目のGI皐月賞が、4月14日(日)に中山競馬場の2000m芝コースで繰り広げられ、戸崎圭太騎手が率いる2番人気ジャスティンミラノ(牡3歳=栗東・友道厩舎、父キズナ)が見事な勝利を収めた。好位置から最終直線に入り力強く末脚を伸ばし、無敗のままGIタイトルを獲得。良好な馬場状態で出された勝ちタイム1分57秒1は、旧記録を0.8秒縮める新たなコースレコードとなった。


 ジャスティンミラノは今回の勝利で、JRAで通算3戦全勝という記録を残し、共同通信杯に続く2度目の重賞勝利を飾った。一方で、同じく騎乗した戸崎圭太騎手は2018年のエポカドーロ以来の皐月賞勝利を手締め、馬を預かる友道康夫調教師にとっては2009年のアンライバルド以来の勝利となった。


クビ差で2着に食い込んだのは、ジョアン・モレイラ騎手が操る7番人気のコスモキュランダ(牡3歳=美浦・加藤士厩舎)、後半馬身分の3着には川田将雅騎手が駆る3番人気ジャンタルマンタル(牡3歳=栗東・高野厩舎)が入り、76年ぶりの牝馬での勝利に挑んだ1番人気のレガレイラ(牝3歳=美浦・木村厩舎)は、6番手でフィニッシュした。



友道調教師、藤岡康太騎手と交わした感動の最終言葉


生前、友道厩舎のサポートをしていた藤岡康太騎手へ捧げられる献花台が設置された中山競馬場

生前、友道厩舎のサポートをしていた藤岡康太騎手へ捧げられる献花台が設置された中山競馬場


 残り100mで先頭を行くジャンタルマンタルを追い越すべく、ジャスティンミラノが着実に迫る。一歩一歩の間隔を縮め、追い抜きにかかる。


「康太! 康太!」


 レース中、友道康夫調教師は必死で声を張り上げた。呼んでいたのは、馬の名でも騎手の名でもなく、藤岡康太騎手の名前だった。


 不慮の落馬事故で4月10日にこの世を去った藤岡康太騎手は、生前友道厩舎の数々の名馬たちの調教に情熱を傾けていた。その中には、マカヒキやワグネリアンなどのダービー馬も含まれ、「彼の手助けのおかげで勝利を挙げられたことがほとんどです」と調教師は振り返る。重要なGIレースである皐月賞に向けたジャスティンミラノの調教にも、藤岡騎手は前々週、前週と続けて参加。4月3日の前週追い切りを終えた後、藤岡騎手はトレーナーに「1週前の追い切りとしては最高の状態だ」と感想を述べたという。


「康太君は私たちの馬のトレーニングに力を貸してくれましたし、ジャスティンミラノも最後の最後まで彼が乗ってくれたんです。1週前追い切りで感じたのは『最高の仕上がりだ』というもの。それが彼と私たちの最後の会話でした。ジャスティンミラノがここまで成長したのは彼の支えがあったからです」


 レース後の記者会見では、友道調教師は感極まりながら、藤岡康太騎手への深い感謝の念と共に、ジャスティンミラノを通じての彼への敬意を表した。



「藤岡康太の精神が後押し」勝利の瞬間


レースを終えた後、友道調教師と共に喜び合った戸崎騎手は、「最後の僅差は康太のサポートのおかげ」と涙を浮かべて語った。

レースを終えた後、友道調教師と共に喜び合った戸崎騎手は、「最後の僅差は康太のサポートのおかげ」と涙を浮かべて語った。


 藤岡康太騎手の力を借り、皐月賞制覇の夢を叶えた。戸崎騎手も、その思いを強く共有していた。


「藤岡康太騎手が連続して追い切りに携わり、馬の状態を詳細に伝えてくれました。最後のわずかな差がついたのは、まるで康太が背中を押してくれたかのようです」


 先頭を走るジャンタルマンタルに迫る最終直線、一時はそのマイル王者が逃げ切りを決めたかと思われる状況だったが、上り坂終わりの残り100mでジャスティンミラノとコスモキュランダが肩を並べながら追い込んできた。そして、ゴール前の最後の50mで、前を追っていたジャンタルマンタルを力強く抜き去り、そのまま抜け出し、内側から迫るコスモキュランダもかわしての勝利。その瞬間、藤岡康太騎手の存在が、友道調教師や厩舎スタッフ、戸崎騎手、そして観客全員の心に駆け巡っていたに違いない。


「康太もきっとこれで喜んでくれると思います。彼には『ありがとう、そしてお疲れさま』と伝えたいです」


 戸崎騎手は、この特別な勝利を噛み締めながら、目に涙をためていた。



成長の証としての馬体重増加に動じず


初の中山競馬場のコースを疎外することなく、終始安定したリズムで5番手を追走するジャスティンミラノ

初の中山競馬場のコースを疎外することなく、終始安定したリズムで5番手を追走するジャスティンミラノ


 昨年のソールインパクトに続く、3戦全勝での皐月賞勝利を飾る少ないキャリアを持つ偉業を成し遂げたジャスティンミラノの才能に言及しないわけにはいかない。昨年11月のファーストラン(芝2000m)、そして今年2月の共同通信杯(芝1800m)は東京競馬場の左周りのワンターンコースでの戦いだったが、今回初めて右回りの1サークルコースである中山競馬場で挑んだ。ライバルとは全く異なったこの競走設計では、友道調教師が以前に「ダービー向け」と評したジャスティンミラノにとって多くの未知の要素が包含されており、これらがもし満足いく成果を上げられなかったとしても、それは非難されるべきことではなかった。だが、ジャスティンミラノはこれらの障壁を見事に乗り越えて見せた。


 レース前の馬体重の発表は、特に指揮官に驚きを与えた。512kgという馬体重は前走に比べ10kgの増加を見せていた。


「競馬場で今朝ジャスティンミラノを見たとき、馬は平常通り落ち着いていました。ですが、馬体重が10kg増だったと聞いては『何!?』と思わざるを得ませんでした。普段、輸送すると少々体重が減る傾向にあるのに、今回は落ち着き払って、トレーニングセンター時と同等の体重でしたし、輸送慣れもしているなと思いました。鞍をつける時やパドックに入る時は多少緊張してはいましたが、それ以外では成長を感じさせる態度で良い驚きでしたね」



右回りコースでの見事な克服


狭しと思われた3、4コーナーでも余裕を持って対応、そしてジャスティンミラノ(左)がクビ差で大勝利を掴む

狭しと思われた3、4コーナーでも余裕を持って対応、そしてジャスティンミラノ(左)がクビ差で大勝利を掴む


 完璧に近いレース運びを披露した。外枠の13番から出走したジャスティンミラノは、リズムよくレースを進める戦術を採用。「馬のストライドを活かし、極端に内を追わずリズム良く進むこと」が合言葉だった。その通り、戸崎騎手の巧みな導きで5番手に位置取りし、抜群のスタートを切って理想的な位置をキープ。戸崎騎手自身がレースを振り返った。


「良いスタートを切りポジションを取ることができればと思っていましたが、馬がしっかりと応えてくれ好位置を確保。思い描いていた通りにレースを進めることができました」


 それにも関わらず、今年の皐月賞は序盤からペースが速い。扉を開けて疾走した4番人気のメイショウタバルがペースを急ぎ、1000m通過は57秒5という奔走。ジャスティンミラノがこれまで経験した落ち着いたペースからは一変、過酷な道となったのだ。結果的に「最初はリズム良く走っていましたが、3、4コーナーで手応えが少し怪しくなった」と戸崎騎手。しかし、調子を失ったわけではなく、直線に向かって「再び馬が反応してくれたのが印象的で、そこに馬の潜在能力を感じました」とのこと。



ダービーへの確固たる手応え


未来のダービー戦士ジャスティンミラノにかかる期待

未来のダービー戦士ジャスティンミラノにかかる期待


 3戦目にして厳しい条件ながらも、右回り、タイトなコーナー、速いペースといった困難に立ち向かい、無傷の記録で皐月賞を制覇。さらに記録的な速さで中山2000mのコースレコードを塗り替えた。そんなジャスティンミラノには、既に5月26日の東京競馬場2400mで開催されるダービーに向けての期待が高まっている。戸崎騎手もその思いを強く持ち、野心を漏らした。


「この馬には大いに期待していますし、それ相応の責任感もあります。日本ダービーは過去に2度の2位を経験しているので、皐月賞を制した今、再びチャンスをつかんだことを大切にし、日々を過ごしていきたいと考えています」


そして、友道調教師も、既にダービー戦略に自信を見せている。


「以前からダービーの方が競馬しやすいと感じていました。この勝ち馬がぜひ二冠を目指すべきだと思っています」


 故・藤岡康太騎手へ捧げられた皐月賞の鮮やかな勝利を胸に、今度は天国の彼にダービー勝利の喜びを伝えたい。ジャスティンミラノ、戸崎圭太騎手、そして友道厩舎による新たな二冠の冒険が、既に始まっている。