大阪杯、新たなスター誕生
中距離の頂点を決める春の大一番、横山和生騎手が率いる4歳牡馬ベラジオオペラが栄光のGI初勝利
待望の春の中距離王者決定バトル、第68回GI大阪杯は3月31日、阪神競馬場の2000mの緑茵で繰り広げられました。そして、横山和生騎手騎乗による2番人気のベラジオオペラ(牡4歳・栗東・上村厩舎所属、父ロードカナロア)が見せ場を作り、見事な勝利をおさめ、GIタイトルを手中に収めました。完璧な天候の下での成績は、勝ちタイム1分58秒2でした。
今回の大阪杯の勝利により、ベラジオオペラはJRAでの通算8戦目にして5勝目を飾ると同時に、これが重賞では2023年スプリングステークス、チャレンジカップに次いで3つ目の栄えあるタイトルとなりました。この大舞台で見せた圧巻のパフォーマンスで、横山和生騎手は大阪杯での初勝利を飾り、馬を管理する上村洋行調教師にとっても、これがキャリア6年目にして待望のJRA・GI初優勝となりました。
一方、接戦の末に2着に届いたのは戸崎圭太騎手が騎乗する3番人気のローシャムパーク(牡5歳・美浦・田中博厩舎)で、わずかに3位には菅原明良騎手に導かれた11番人気のルージュエヴァイユ(牝5歳・美浦・黒岩厩舎)が入賞しました。そして、1番人気とされた昨年のダービー馬であるタスティエーラ(松山弘平騎手騎乗、堀厩舎)は11着と振るわず、惜しくも敗北を喫しました。
忘れられないダービーのリベンジ
「恩返しができて最ッ高です!」という横山和生騎手の喜び
追っ手の猛追をかわし、躍動感あふれるGI初制覇の瞬間。
「最ッ高に幸せです!」
その喜びに満ちた横山和生騎手には、共にGIレースの栄冠に輝きたいという強い願いがありました。それは、「忘れがたかった」と本人が語る昨年のダービーでの悔しい思いを晴らすこと。インを縫って駆け上がってきたものの、タスティエーラにクビ差で後塵を拝し、タイム差なしとはいえ肉薄の4着にとどまり、栄光の一歩手前で逃がしてしまったのです。そのため、かつてそれに先行されたタスティエーラ、ソールオリエンスをこの大阪杯で破り、GIタイトルを勝ち取ることが、何よりも的確な報いになりました。横山和生騎手が「最ッ高に」と言葉を大にして語った様子は、彼の心からの歓喜の声として十分すぎるほどに伝わってきました。
レースは積極的なスタートから、2番手でレースをリード。「馬場を考慮して、出来れば前に行きたい」という騎手の戦略が功を奏しました。上村調教師もその戦略に賛同し、「先頭を切ることも視野に入れていた」と語っています。2番手のポジションを自らの手で確保し、飾り気のないライドで優位を築き上げました。しかし、この馬、ベラジオオペラは自らの能力を信じ、強い結束と信頼を持つ横山和騎手の手綱さばきで、力強く最後まで走り抜けました。
「ベラジオオペラは本当に操縦性に優れていますし、この度は先行策で勝負をかけたんです。スタートが上手で、折り合いもよくつき、最後の直線でしっかり脚を使ってくれる。これで彼の強みを最大限に生かすことができたと思います」
中距離バトルの新たな展開
カーブを回り勢いを増すベラジオオペラ(中)、リードを保ちながらゴールに向かう勇姿
見事な先行策で、2番手を維持することに成功したベラジオオペラ。前半1000mが60秒2という緩やかなペースを利用し、反対側のストレートでローシャムパークとソールオリエンスが上位争いに名乗りを上げ始めた。しかしそのプレッシャーに動じることなく、横山和騎手とベラジオオペラは冷静さを保ちながらペースを加速させて主導権を手中にし続けた。
「競馬は戦術を駆使しながら進めました。3、4コーナーでベラジオオペラには頑張らないといけなくなった状況でしたが、それでもしっかりと持ち応え最後は見事なレースをしてくれました」
ゆったりとした流れから一変、3コーナーから横山和騎手が刻んだ11秒台前半のラップは厳しいもの。先頭で迎えた直線では逆転の隙を与えることなく、ベラジオオペラは見事なスピードとスタミナを見せつけた。4歳馬への疑問視がされる中、大阪杯の勝利はベラジオオペラにとって、自身の価値を証明する大きな成果となったはずだ。
上村調教師「これからもっと強く」
幸せな笑顔を浮かべる上村調教師(中)、GI初制覇の快挙
同世代のトップ馬、リバティアイランドや1つ年上のダービー馬ドウデュースが不在の中で行われた今回のレース。決してこの勝利が全てを意味しているわけではないことをベラジオオペラの陣営も肝に銘じている。上村調教師はレース後、国内の他の強豪馬との差を弁えつつ、「強い馬として立ち続けるためには、もっと馬を強化していかないといけない」との思いを語った。これはベラジオオペラが今後もライバルに対して負けない力を持つことへの自信の表れだ。
「ベラジオオペラはまだ成長途上にあり、これからが楽しみな馬です」
それに応えるように横山和騎手も、「まだ本馬の潜在能力には磨きがかかり続ける可能性がある」という上村調教師との共通認識を持ちつつ、この勝利をきっかけにベラジオオペラがどのような進化を見せるかに注目している。
これまでの牡馬クラシックホースがいまひとつ結果を出せていない一方で、新しく4歳のチャンピオンが台頭した。ドバイ遠征から戻ってくる、他の実力馬との戦いが真価を問うことになるだろう。ベラジオオペラは、次なる舞台で成長した姿を見せる機会を得ることになりそうだ。新しいスターの誕生、そして4歳世代の逆襲が、これから始まる。