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 2024/03/27 07:17

大幅な戦力強化に動いた日本ハム 上位進出へ「課題の二遊間」を埋められるか


山崎福也をFAで獲得し、戦力強化に動いた日本ハム。新庄体制3年目、飛躍の年にできるか

山崎福也をFAで獲得し、戦力強化に動いた日本ハム。新庄体制3年目、飛躍の年にできるか


 いよいよシーズン開幕が目前となったプロ野球。1934年の日本プロ野球誕生から90周年のメモリアルイヤーとなる今季、覇権を奪うのはどのチームになるだろうか。春季キャンプ、練習試合を含めた実戦を経て、各チームとも一軍メンバーが固まりつつあるが、もちろん1年間を戦うには開幕一軍入りを逃した選手の存在や若手の突き上げも必要不可欠だ。そこで今回のコラムでは各チームの昨季の「ポジション別得失点貢献」をもとに、新シーズンを戦ううえでのポイントや展望を確認していきたい。貢献度に使用する選手評価は、野手の打撃をwRAA(Weighted Runs Above Average)、守備にはUZR(Ultimate Zone Rating)。投手はRSAA(Runs Saved Above Average)を用いている。いずれもリーグ内の平均的な選手と比較して、打撃・守備・投球でどれだけ得失点に貢献しているかを示した指標であり、本稿ではそれぞれ同一ポジションの平均的な選手と比較している。なお、RSAAの計算式で使用される失点率は実際のものではなく、守備の影響を排除したtRA(True Run Average)を使用している。


 今回、評価に活用した2つの指標(wRAA、RSAA)は、スポーツナビがプロ野球の週間MVPを選出する企画でも活用しており、指標の解説を以下リンクから確認できる。



大型補強で厚みを増した先発ローテーション


日本ハム投手:2023年得点貢献度

日本ハム投手:2023年得点貢献度


 昨季は2年連続の最下位と振るわなかった日本ハムだが、先発投手はリーグ平均レベルの得点貢献を記録した。チーム最多の投球回を記録した上沢直之が退団となったものの、積極的な補強と飛躍を予感させる若手の存在もあり、昨季以上のローテーションを形成する可能性が高そうだ。ルーキーイヤーから3年連続で規定投球回をクリアした伊藤大海は、チームトップの得点貢献を記録し、自身初となる開幕投手に内定。FA権を行使せずに残留した加藤貴之とともに、今季もチームをけん引する活躍を見せたい。


 また、FA市場で6球団の争奪戦の末に獲得した山崎福也への期待も大きい。新庄剛志監督からはホーム開幕戦での登板が明言されており、オリックス時代の女房役である伏見寅威とのバッテリーにも注目が集まる。また、メジャーでも実績を重ねたバーヘイゲンが3年ぶりにチームへ復帰した。バーヘイゲンは2020年にはリーグ3位の得点貢献を記録した実績があるが、昨季はメジャーで年間を通してショートイニングのリリーフとして起用されている。NPBの経験は重ねているが、先発としてブランクがある中でアジャストできるかは注目したい。


 5番手以降も候補が多く、上原健太と鈴木健矢、北山亘基がここまでの実戦でアピールを見せているほか、今月行われた侍ジャパンと欧州代表の試合に選出された根本悠楓らが控える。先発ローテーションが充実した布陣ということもあり、金村尚真や新外国人のマーフィーはリリーフとして起用される可能性もありそうだ。



昨季リーグワーストだったリリーフ陣は大幅改善か


昨年は移籍1年目でクローザーを任された田中正義。今季もフル回転の活躍が期待される

昨年は移籍1年目でクローザーを任された田中正義。今季もフル回転の活躍が期待される


 一方のリリーフ陣は、得点貢献度でリーグワーストと課題のポジションだった。オフの補強は新外国人のザバラを加えたほどで、今季は既存戦力の底上げが求められる状況だ。特に注目したいのは、田中正義だろう。移籍1年目にして25セーブを挙げる活躍を見せたが、投球内容はリーグ平均に届いていなかった。今季も開幕からクローザーとして起用される見込みだが、昨季以上のピッチングができるかは注視したい。そして、昨季のリリーフ陣で最も高いRSAAを記録した河野竜生は、過去3シーズンにわたって安定した活躍を見せており、今季もブルペン陣の中心として活躍が期待される。


 このほか50試合に登板した池田隆英と玉井大翔や、球団記録となる29試合連続無失点をマークした福田俊、トレードで加入後26試合に登板して防御率1.50を記録した山本拓実らが主力として想定される。また、先発の項でも触れたが、金村やマーフィーといった好投手がリリーフとしても起用される可能性があり、先発陣の充実がリリーフ陣の強化にもつながる見込みだ。さらに、2021年のドラフト1位・達孝太が春季教育リーグで最速155キロを計測したほか、3月に支配下を勝ち取った福島蓮など若手の成長も著しい。勝ちパターンとして実績のある宮西尚生や杉浦稔大、石川直也もここまでの実戦で好投を続けており、弱点だったリリーフ陣はむしろリーグ上位の成績を収めることもあるかもしれない。



チームの得点力に大きな影響を与えるマルティネスの起用法


日本ハム野手:2023年ポジション別得点貢献度

日本ハム野手:2023年ポジション別得点貢献度


 昨季は移籍1年目の伏見がチーム最多の88試合でマスクをかぶったが、攻撃面でリーグワースト2位の得点貢献を記録するなど、深刻な打撃不振に苦しんだ。2番手のマルティネスが捕手としてリーグ最高レベルの打撃成績を残したことで大きな穴にはなっていないが、延べ8名の捕手が起用されるなど、課題の多いポジションとなっている。ここまでの実戦を見ると、捕手は複数の選手が満遍なく起用されているが、マルティネスが捕手としてあまり出場していないのが特徴だ。マルティネスが一塁を中心に出場するようであれば、捕手の得点貢献度は大幅に落ち込むことが予想されるため、起用法には冷静な判断力が求められるところである。


 代わって、積極的に起用されているのがドラフト2位ルーキーの進藤勇也だ。非凡な強肩と落ち着いたインサイドワークで首脳陣から評価を集めており、将来的なレギュラーとして大きな期待を受けている。



上位進出には二遊間の活躍が必要不可欠


 内野はほとんどのポジションで、攻守ともにリーグ平均に届かない成績だった。そうした中、三塁で高い得点貢献を記録していた清宮幸太郎が春季キャンプ直前に左足首を故障してしまった。近々、清宮は実戦復帰する見込みだが、状態を高めて早期に一軍合流できるかどうかは注目だろう。その清宮と同じく一塁と三塁を守る野村佑希は、オープン戦で非常に優れた成績を収めており、昨季の万波中正のような大ブレークを遂げるかもしれない。一塁にはチーム2位の15本塁打を放ったマルティネスもいるため、内野の両コーナーは攻撃面で期待を持たせる布陣となっている。


 一方、チーム最大の弱点となっているのが二遊間だ。2年目を迎えた上川畑大悟が前年から成績を低下させてしまったほか、石井一成が故障もあってわずか36試合の出場にとどまった。実績のある彼らの復調が待たれるほか、NPB2年目を迎えた加藤豪将、若手の奈良間大己や水野達稀、細川凌平らの成長がチーム浮上のカギを握る。ここまでの実戦では、水野がバットで猛アピールを見せており、レギュラーに定着することが期待される。また、先日には巨人からトレードで若林晃弘を獲得しており、チームの穴埋めに成功している。



鉄壁の守備力を誇る外野陣。万波がチームの顔に


攻守に非凡な能力を発揮し、チームの顔になりつつある万波。鉄壁の外野陣の軸となる選手だ

攻守に非凡な能力を発揮し、チームの顔になりつつある万波。鉄壁の外野陣の軸となる選手だ


 外野では、ライトの万波がリーグ2位の25本塁打を放った攻撃面と、ゴールデングラブ賞に輝いた守備面ともに大きな得点貢献を記録した。侍ジャパンの代表として、昨秋のアジアプロ野球チャンピオンシップ、今春の欧州代表との試合にも選出されるなどし、チームの顔になりつつある。その万波に次ぐレギュラー候補が2022年に首位打者を獲得した松本剛である。昨季はコンディションに不安を抱えていたようだが、レフトとセンターともに高い守備得点を記録した。新庄監督からの信頼も厚く、名実ともにチームをけん引していきたいところだ。


 日本ハムにはこの2名のほか、江越大賀や五十幡亮汰など守備力に優れる外野手が多いのが特徴だ。昨季は攻撃面での得点が伸び悩んだが、新外国人のスティーブンソンと、昨季は13試合の出場にとどまった淺間大基がともにオープン戦で好成績を残し、外野のポジション争いはハイレベルとなりつつある。最後に、DHとして起用が予想されるのが新外国人のレイエスだ。メジャーで30本塁打以上を2シーズン記録した実績を持ち、ここまでの実戦でも持ち前のパワーを発揮している。近年のパ・リーグでは、活躍する新外国人野手が希少となっているため、レイエスやスティーブンソンが好成績を収めるようだと、他球団に対して大きなアドバンテージとなる可能性が高い。



新庄体制3年間の集大成を見せられるか


 オフには加藤貴の残留に加え、山崎福也やレイエスを争奪戦の末に獲得するなど、編成面で大幅な戦力補強を行った日本ハム。一方で、二遊間が大きな穴となっており、上位進出にはこのポジションの奮起が必要不可欠だ。就任3年目を迎えた新庄監督が、成績次第でユニホームを脱ぐ覚悟と意気込んで臨むシーズン。2年間で土台を築いた既存戦力と新戦力の歯車がかみ合い、上位進出を果たせるか。ファイターズ創設50周年を迎える今季、2年連続最下位からの下克上に挑む。