春季中距離頂點戦・大阪杯を徹底検証
阪神芝2000メートルで実施されるグレード1競走の大阪杯。かつて2016年までは春の天皇賞への前哨戦として位置づけられたグレード2であったが、2017年からは成熟馬の中距離チャンピオンを決定する戦いに昇格し、キタサンブラックをはじめとする7頭の名馬がこの冠を手にしてきた。本年はどの馬がこの栄誉を勝ち取るか。JRA-VAN DataLab.やTARGET frontier JVによるグレード1昇格以降の過去7年のデータ分析を行いたい。
注目すべき伏兵も
■図表1 【人気別実績】
過去10年間で、1番人気と2番人気の馬はそれぞれ連対率42.9%を記録。また、4番人気の馬は複勝率57.1%と良好な成績を収めている。逆に3番人気の馬の複勝率は14.3%に留まり、5番人気の馬は3着内に入ることがない結果となっており、伏兵馬にもチャンスがあるレースの性格が伺える。2019年には、皐月賞優勝馬であるが9番人気まで評価が下がったアルアインが優勝するなど、2000~2200メートルのグレード1で好成績を残している馬が中位の評価で結果を残すケースが目立つ。
キャリア13~15戦目の5歳馬に照準を
■図表2 【年齢別実績】
3着以内に入る馬21頭中20頭が4歳または5歳の馬であった。4歳で好成績を収めた10頭は全てキャリア10戦以内で成し遂げている。一方、今年登録されている4歳馬は全てこの条件を満たしている。ただし、5歳馬はキャリア12戦以下で【0.1.0.9】、16戦以上で【0.1.1.14】と、どちらも複勝率が10%台前半であることに対し、キャリアが13~15戦の馬は【5.1.1.5】と複勝率58.3%と素晴らしい成績を残している。こうしたデータは4歳馬とは異なり、有力馬の選別に役立つと見られる。
前走がグレード2の馬が多数好走
■図表3 【前走クラス別実績】
前走クラスを見てみると、グレード2に出走していた馬の中から好走馬21頭中14頭が誕生。この中でアメリカJCC出走馬は【0.0.0.6】、日経新春杯出走馬は【0.0.0.4】と、やや休み明けの馬は苦戦傾向があるが、金鯱賞や中山記念、京都記念に出場していた馬が主力であることが分かる。
前走が国内のグレード1に出走していた馬では、芝2000メートルのグレード1で既に好成績を残していた4頭が好走している点が見受けられる。また、海外のグレード1に出走していたジャックドールも含めて5頭は、この大会で2番人気内に支持される共通点を持っていた。そしてグレード3のクラスからは、過去5連勝中だったレイパパレ(2021年1着)、そして近5走で4勝を挙げていたアリーヴォ(2022年3着)の2頭がいた。かなりの実力がなければ勝利には結びつきにくい。
グレード2のレースから前走で上位に入ったグレード1連対馬に期待
■図表4 【前走金鯱賞、中山記念、京都記念からの実績馬】
図表4に掲載されているのは、前走がグレード2のレースで、特に金鯱賞、中山記念、京都記念を走った13頭の好走馬のデータである。これらの馬は前回の競走で5番人気以内の支持を受けており、それら馬の複勝率の合計は34.2%に達している。前走の着順で1位から5位までは複勝率が26.3%、6位から9位は複勝率が22.2%、10位以下が同10.0%となおり、一桁順位を獲得していれば望みがあることを示している。さらに、このグループの中で良い成績を収めた13頭の中で10頭は、グレード1での連対経験を持っていた。
前走「積極策略」馬匹表現出色
■表5【前走脚質分別の成績(国内走を限る)】
※脚質の分類はTARGET frontier JVから抽出
最終的なデータとして、海外走を除く前走脚質分別の成績に注目したい(脚質の分類はTARGET frontier JVのものを使用)。表5に示されているように、前走で「積極策略」をとった馬が5勝を収め、勝利率15.6%、複勝率28.1%を記録している。また前走「後方」の戦術を取った馬は1勝しかしていないが、連対率は「積極策略」を超える25.0%に達している。「逃げ」の戦術では2019年キセキによる1回の2位があるだけで、意外なことに「中団」戦術を取った馬からは連対者が出ていない。
【結論】
ジオグリフとプラダリア、5歳で注目
今年の大阪杯では、先に挙げた表2の「5歳のうちキャリアが13~15戦の馬」がこれまでの優勝馬7頭中5頭を占めており、抜群の実績を見せている。特にキャリアが14戦のジオグリフ、15戦のプラダリアに目を向けるべきだろう。両馬とも前走で「積極策略」をとっており(表5)、ジオグリフは中山記念で4番人気3位、プラダリアは京都記念で3番人気で勝利を収めており、「前走G2レースで5番人気以内」(表4)に一致する。
更にジオグリフは、2022年の皐月賞優勝馬であり、表4で述べられた「G1レースで上位に連対すること」の条件を満たしている。また、このレースでは「芝の中距離G1で中位人気だが好走する馬」が目立つ(表1の本文)。一方プラダリアは、G1レースでは日本ダービーで5位が最高記録であるが、父がサンデーサイレンス系のディープインパクトであり、関西出身馬としては過去7年で6勝を挙げるなど、大阪杯で好成績を修める血統を引いている。
4歳のラインアップでは、前走がG1の有馬記念で6位に終わり、今回は2番人気内に予想されるタスティエーラが挙げられる。また中山記念で1番人気だったが4位に終わったソールオリエンスも、昨年のクラシック戦線を賑わせた馬である。これらの馬を比較すると、前走「中団」でサトノクラウンの子であるタスティエーラよりも、前走「後方」でサンデーサイレンス系キタサンブラックを父にもつソールオリエンスの方が評価が高い。さらに1頭、注目しておきたいのが、G3の競走で3連勝中、前走の愛知杯でTARGET frontier JVの分類によれば「積極策略」で走ったミッキーゴージャスだ(表3の本文と表5)。