創志学園の「アグレッシブ」な野球哲学
甲子園を目指す情熱と門馬敬治監督の指導法
選抜高校野球大会への出場を喜び合う創志学園の選手たち
3月18日に開幕する第96回選抜高校野球大会では、全国の32の学校チームが集います。これら多様な個性を持つ各チームの中で、主催者が実施したアンケートは、チームごとの魅力や球児たちの最新事情を垣間見ることができます。
貫禄ある戦いへの熱い思い
創志学園はセンバツへ7年ぶりの帰還を果たしました。まだ創立14年目でありながら、春夏通算で6度も甲子園に出場し、その中から西純矢選手(阪神タイガース)などのプロ選手を輩出してきた新進気鋭の学校です。2011年、東日本大震災のあと創立したばかりの創志学園は初のセンバツに出場し、当時2年生の主将が「がんばろう、日本」という選手宣誓で全国に感動を与えました。
2022年8月よりチームの指揮を取る東海大相模高校(神奈川県)で春夏合わせて4度の優勝を経験した門馬敬治監督は、その指導の下原貢さんから受け継いだ「攻撃は最大の防御なり」との哲学を、新たな舞台である創志学園でも展開しています。アグレッシブさを象徴する「アグレッシブ・ベースボール」は、創志学園のアイデンティティとして確立しつつあるのがチームのアンケートからもうかがえます。「常に攻めの姿勢を持ってバットを握りたい」と意気込んでいます。
豊島虎児主将も「日常の練習は常に甲子園を意識したもの」とその意識の高さを明かしています。甲子園でのプレイにおいてもその日常の積み重ねが「いつも通り」となるよう、特別な処方ではなく常に水準を高めながら日々を送ってきました。
豊島主将は、食事に関して「一粒のご飯も、一切れのサラダも残さずに食べること」を心がけており、これは門馬監督の下での新しい決まりごとの一つです。作ってくれる人への感謝を表すために徹底しています。「門馬監督になってから寮生活の意識が変わった」と豊島主将は話し、監督の指導で生活面からも厳しい規律と高いスタンダードが求められていることが感じられます。
選手たちの忘れられない瞬間
選抜大会に向けた緒戦に臨む創志学園の記録員含む全選手の意気込み
創志学園にとって忘れられない激戦の記憶がアンケートから浮かび上がってきました。選抜大会前に実施された、記録員を含む21人に対する「野球で最も心に残る出来事」についての問いに、ほぼ7割に当たる14人が昨秋の中国大会準々決勝で見せた広島新庄戦、奥本誠治選手のナイン回裏での劇的なサヨナラホームランを挙げました。これは選手たちにとって、人生の野球で忘れがたい瞬間となったようです。
スコアレスで迎えた土壇場で、決勝点となるホームランを豪快に放ち、試合を締めくくった奥本選手は自身も「広島新庄戦のサヨナラホームラン」と答えました。また、その試合で119球を投げ抜いた山口瑛太投手も「奥本のホームラン」とその一撃を称賛しています。角戸陽成選手は「山口の広島新庄でのピッチング」と答えており、エースの健闘も強く印象に残っています。
選手たちが描く将来像とその抱負
「将来の夢」について尋ねられたとき、山口瑛太投手ら6名がプロ野球選手との道を志望しています。他にも教職や消防士などの社会的な職を目指す選手がおり、また「安定した生活を望む」、「自分の好きなことで生計を立てること」といった回答が寄せられました。打撃でチームに強烈な印象を残した奥本誠治選手は、自身の将来については「探し中」と答えており、彼の好きな言葉は「志高く」です。この言葉を心に刻みながら、彼らは夢の舞台から将来に向けてのビジョンを描いています。
攻撃重視の投球スタイルと勝利への意志
山口瑛太投手の着実な投球フォーム
春夏通算で4回の甲子園を制した経験を持つ門馬敬治監督は、新しいユニフォームをまとって再び甲子園の地を踏む準備が整っています。「一度高校野球を離れてもう一度甲子園に戻れることに心から感謝している」と、監督は甲子園への思いを語ります。
チームの強みは、左右の投手陣、特に昨秋の公式戦で防御率0点台を記録した二人のエースである。左腕の山口投手は、172センチという身長でも力強いアームアクションでテンポよく打者を退け、抜群のコントロールを誇り、前シーズンは極めて少ない四死球で抜群の成績を収めています。体重増加などのトレーニングを積み重ね、「より速いボールを投げられるように」と意欲を燃やしています。
184センチの長身を誇る右腕である中野光琉投手は、最速146キロを記録する本格派。スタミナにも自信があり、昨秋は完投ゲームを5まで数え、この大型新人は「センバツでは150キロを投げることを目標にしている」と話しています。彼の目指す投手像は、パ・リーグで新人王に輝いた山下舜平大投手(オリックス)です。
門馬監督のかつての野球スローガンである「アグレッシブ・ベースボール」が、今、創志学園でも浸透し始めています。特にその象徴とも言えるのが左打者の1番バッター、亀谷理仁選手です。彼はカウントが浅いうちからでも果敢に打っていきます。昨秋は14安打でチーム最多を記録し、中国大会準決勝では攻撃の先頭を切ってスコアを積み上げました。
共に高め合う創志学園のチーム精神
創志学園の象徴である亀谷理仁選手
チームとしての走塁技術も高く、互いに塁を積極的に狙う意識がチーム全体に根付き、得点へと繋げてきました。
このたびのセンバツ出場は、昨夏の敗退を契機に結束力を高めた成果です。夏の岡山大会では初戦で岡山南高校に敗北し、勝負の厳しさを痛感しました。
豊島虎児主将は「以前は厳しさに欠けていたものの、その敗戦を通じて、より厳しいチーム作りが必要であると痛感し、選手同士で真剣に意見交換できるようになった」と語ります。そして、「甲子園では自らのスタイルを貫き、積極的なプレーで勝利を目指す」と誓っています。